12.ダンジョン攻略1
そのダンジョンは王城から少し離れた場所にあった。だからこそ、その周囲には兵がいた。
フォルテの神殿から受け取った服を着たハロルドは神々しい。ペーターはそれをキラキラとした瞳で見ていたが、ハロルドとしては全く嬉しくない。
わざわざ、神官服を着て素顔を晒すのは神子であるというアピールだった。ある程度、素顔を晒しておくとメガネをかけた時により声をかけられる可能性が減る。
その落差にハロルドだとは思わないのだ。
(その時に向けられる視線は……まぁ、慣れだな)
美しいと聞く微笑みを浮かべて、さも綺麗なものだけを見てきたというように純粋な様子を見せる。
それだけで道は開かれた。
「ハル、着替えは?」
「中に入って結界を作ってからだね」
「そっか。あんま、無理すんなよ」
「……ありがとう」
浮かべたくもない笑顔を浮かべて、手すら振って見せるハロルドに、アーロンは少し心配そうな顔をしていた。ハロルドが本来、静かに、目立たず暮らしたいと願っていることを知っているからかもしれない。
(うまくいかねぇもんだよなぁ)
アーロンはハロルドが地位も名誉も欲していないことを知っているから、そうぼやきたい気持ちだ。ペーターを見ていても「お前の行動を、ハルは喜ぶのか?」と言いそうになる。ただ言う機会がないだけだ。
道なりに進んだ場所にそれはあった。木々の間にある歪んだ空間が可視化されている。
(ゲームにこういう空間の切れ目?みたいなのあったよなぁ)
軽く現実逃避をしてしまう。
ゆっくりと息を吐いて、空間に手を伸ばす。それらはハロルドたちを飲み込んでいく。
その先にあったのは石造の迷宮だった。
「あー、やっとこの無駄に装飾の多い服脱げるな。アーロン、手伝って。あ、女の子に見せるわけにもいかないからアイマンさんとダンビュライトさん、ペーター。壁になってもらっていいですか?」
「いいよー、というか俺のことはノアでいいよ。家名長いから」
相変わらずどこか呑気な声音のノア。
これは単に外からはそう見えたほうがいい、と判断しての仕草なので、ハロルドはあまり気にしていない。アーロンがこそっと「あの人、大丈夫?」とハロルドに尋ねた。ハロルドもこそっと「ああ見えて真面目だから大丈夫」と返した。本人が聞いたら「職務妨害!」と言いそうだ。
着替えを済ませて、「お待たせ」と顔を出す。手に持っているのは大きな杖。
「俺がでしゃばっても邪魔にしかならないから、基本は強化魔法と弱体化魔法、治癒、結界でいくね。魔力回復薬も持ち込んでいるから、無理せず、安全第一でいきましょう」
「ダメそうなら帰っちゃお!」
「ハルが気にするから、サービス」
「足、引っ張らないでよねぇ〜」
妖精女子組は相変わらずである。だが、彼女たちの力があってこそ、ハロルドはダンジョンに入ることにしたのだ。
退却路がない場所になんて怖くて来れたものではない。
だって、ここはゲームなんかではない。
傷付いたら、病気になったら、普通に死んでしまうのだから。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
ちなみにアーロンたち友人組はみんなハロルドが作ったお守り(護符的なやつ)持ってたりする。




