37.尻拭い2
どうしても王城へ行く必要があった理由は、そこにアーロンがいるからである。
本当は巻き込みたくなかったけれど、スノウと一緒にいる時点でだいぶ手遅れだったりする。
今のハロルドはそこまで考えている余裕がない。ただ、このまま尻拭いなしで放置していると厄介ごとしかないのだけは分かっている。
王城に部屋と人を借りて、文字通り吐きながら後始末をする羽目になったハロルドは神に愛されているのに不運だった。
ネーヴェもオロオロするだけで、帰ってきたらネモフィラに「ジャマ。端で膝でも抱えてて」と一蹴された。
「ハル!お前なんで……いや待て、寝ろ!!」
「ごめん、まだ寝れないかな。悪いけど、この地図にこの呪符が巻かれた物の位置をピン留めしてくれない?……ルア、ローズは?」
「今帰ったわよー!」
「おかえり。怪我はない?」
ホッとしたような顔でローズを出迎えたハロルドだが、やはりその顔は真っ青超えて真っ白だった。
「ハル、寝て!!」
「ごめん、まだそこの黒いのの尻拭い終わってなくて……」
遅れてやってきたのはウィリアムだった。そしてやはり、ハロルドを見て「寝てください!」と悲鳴のように叫んだ。
「すみません、とりあえずやって欲しいこと伝えるのであとはお願いできますか?そこの黒い神様使ってもいいです。あと、その右後ろの人はダメです。しょっ引いてください」
男性神官はすぐに影の人間に連れて行かれた。ハロルドが城に来てから何人か連れて行かれているので、彼はちょっとだけ「フォルテ様の加護、めちゃくちゃまともなんだなぁ」と思ってしまった。
「アーロンがつけた印のところに浄化と回復の魔法が使える方の派遣を。無理そうなら回復の方は薬を出します」
「足りなかったら自分で作るって言うと思うから、どうにか手配して欲しい」
アイマンの言葉を聞いて、ウィリアムが青い顔で頷いた。これ以上ハロルドを働かせると本気で死にそうな気がした。
「ミライは俺が次に目を覚ますまで継続できませんか?デイビッドをぶん殴ってでも解決させます。できなければ勇者を投入してください。俺の名前は絶対に出さないように」
「ミライは継続可能ですが、どうしてもあなたが出なくてはいけませんか?」
「身分が身分なので、国が強制させるよりも俺が出たほうが、マーレ王国の干渉が少ないはずです。加護持ちってそれだけ特殊な地位なのでしょう?ユリウスも『使う』ので最低限、生かしておいてください」
アーロンは、ピン留めを一旦辞めて「もういいだろ!国の仕事だ!!」とハロルドの肩を掴む。
「アーロン」
「何だ!?」
「ごめん、寝る。一日で目を覚ませなかったらルイにフォルテ様の教会へ……」
最後まで言い終わる前に、ハロルドの意識が落ちた。
それと同時に、部屋の端に雷と茨が出現した。
——神罰である。
雷は妻の一人にせっつかれたフォルツァート。
茨はど怒り申し上げているフォルテ。
ついでにあと二柱の神が罰を与えている。
ただでさえ、問題が多く起こっている。エスターが自らの仕事の傍らでせっせと調整、フォローに走っていたから、目溢しされていたに過ぎない。看過できないことが起きれば当然、神であっても罰を受ける。
そこにいたのは黒い長毛の猫。
「……コイツ、ハルの身体で好き勝手した。なのに、役立たずにまで?」
「なーごぉー」
元々、コミュニケーション能力に問題があった神なので、喋らないほうがマシはマシであったりする。
「……今なら斬れそうですね」
シャルロットのそんな言葉に、ローズとネモフィラに「やっちゃえ(ー!)」という援護射撃が入った。
みんなに寝ろって叫ばれる主人公。
なお、ネーヴェは「流石に神殺しはヤバいですよ。あなたに何かあればハルが悲しみます」というフォローがアーロンから入ったので命は助かった。
エスターは儀式が終わって急いでお兄ちゃんを確保しようと思ったらやらかしてて胃痛でぶっ倒れた。とても かわいそう。




