30.脱走王子様
ルクスは溜息を吐いていた。
狙われているのがわかっているはずなのに、単独行動をするのは大変困る。
たとえ現状王族と公式には発表されていない少年であり、きっとすでに居場所のない彼の故郷では帰ったところで殺されるだけの少年であっても、彼はマーレ王国の王族なのだ。王子がエーデルシュタイン王国内で死んだなんて責められては面倒だ。
(まぁ、やりかねないとハルが判断したから僕が派遣されているのかもしれませんが)
ハロルド的には「何もないとは思うけど、見張りをつけておかないと不安だよなぁ」という襲撃されたことも踏まえての対処だった。まさか、王子自らが飛び出すなんて思ってはいなかった。
「うーん、デイビッド自身はまだ記憶喪失……だから無茶をするのでしょうか?それともドラゴンの声が聞こえるから?」
襲撃後の報告やユリウスの自供から、もう身元は割れている。にも関わらず抜け出せていることも不審点だ。何かペーターのように隠密に長けたスキル、もしくは魅了や命令系の人を従わせるスキルがあるのだろうか。
(そんな人をハルに会わせないのではないでしょうか)
一応、学園に入学するにあたって彼もまた儀式を受けている。それに関してのデータは個人的な物なので口外されていないが、よほど危ないスキルを持っていたならばマリエのように力を封じられるはずだ。
ルアから念話が届く。ハロルドと話してもいいけれど、ルアに話しかける方が気楽だ。姉のような女子組にとやかく言われるのは面倒なので。
そんなことを考えながら追跡していると、シャルロットを見つけた。その少し後ろに、アイマンとハロルド、ミハイル、ペーターが見える。
「シャルロットさん、向こう!」
「わかりました!」
すぐに追いかけて来るあたり、『厄介ごと』を早く片付けたいという強い意志を感じる。
冒険者ギルドの外れ、森の中に入った瞬間にルクスは合流した。
「あれ、リリィ姉さんはまだ帰ってないんですね」
「この件で宰相閣下のところへ伝言に行ってもらってる。……不安だけど、仕方ない」
リリィのお口と態度の悪さをよく知っているので、ルクスはだいぶ不安になった。
ローズの姿が見えないあたり、不安すぎてお使い要員を増やしたのだろう。
「ハロルドさん、この方面はドラゴンの目撃地域です。早く戻らないと……」
「わかってるけど、マーレ王国に口を出されるような隙は作りたくない」
「なんでいきなり目を離してるんだよ、領主様の長男!!」
「そこまでは分からない。けど、事実として脱走しているからね……まぁ、後で咎めがあったとしても仕方がないね」
「お前もここらで引き返せ。俺も、ドラゴン相手に守り切れると思うほど慢心していない」
アイマンがそう言った瞬間だった。
デイビッドを小脇に抱えたシャルロットが走っている。
「アイマン殿!ちょうどいいところに。これをよろしくお願いします!!」
デイビッドが宙を舞った。
思いっきりぶん投げてる




