17.神獣の言葉と魔物
思った以上に効果があったメガネに満足したハロルドは機嫌が良かった。
そして友人たちはハロルドの機嫌が良いことににっこりしていた。苦労しすぎだったので仕方がない。
そんな本日の放課後の図書室。ハロルドの横でエリザベータが座っていた。誰もハロルドを見つめていないので彼女もご機嫌である。虫を払う手間が省ける、そんなことしか考えていない。なお、エリザベータ自身は婚約者ガチ勢、拗らせた激重感情、触るな危険などという扱いをされている。間違ってはいない。
このメンバーが揃っているからか、ルートヴィヒがユースティアの神託を受けて分かったことを話し出す。
「そういえば、魔物が増えているという件だが、ラムル方面の森から例の香水を撒いた痕跡が見つかったようだ」
「またそれ?……うーん、でもユースティア様だっけ?そんなもので竜がやってくるぞーなんて忠告してくるのかなぁ」
「それは何か誤魔化してるだけかもな。スノウも血が親の竜を呼んでいる可能性があるっつってたし」
「血?」
アーロンの言葉に一同首を傾げた。
エリザベータは少し考え込んでから、「子供のドラゴンを意図的に害した阿呆がいるのかもしれませんわ」と口に出した。
「ドラゴンは圧倒的に強い生き物です。長寿ですし、力が強く、その息は多くの生命を消し飛ばします。けれど、出生率はそれほど高くありませんわ」
「その分、子を大事にしている……という生態なのかな?」
「ええ。子、というよりは家族といいましょうか……番と子に危害を加えればそれはそれは暴れると聞きます。とはいえ、ドラゴンはこの大陸ではほぼマーレ固有の魔物です。なかなか調べる機会などないのですけれど」
そうであれば、誰かがドラゴンの子供を害し、その血を。あるいは傷ついた子竜……一番最悪な想定であれば遺体となったそれをこの国に持ち込んだという可能性も考えられる。
「ところでアーロンさん」
「はい」
「そういったことは速やかに陛下に奏上すべき案件ですわ。今後、スノウ様がそういったことを口走ったらすぐにハルに頼んで連絡を取りなさい」
ガチ説教だった。ハロルド以外には興味がないとばかりにその言葉は冷たい。実際に彼女の頭の中身は8割ハロルドだ。残りの1.5割くらいが魔法、0.5割くらいがその他である。
「確かにハルが狙われてるんだもんな。忘れてて悪かったよ」
「いや、最近厄介ごとだらけだったから吹っ飛ぶのも仕方がないよ」
そう言って苦笑するハロルドの耳に隣から「厄介ごと?」という不快そうな声が聞こえた。
「あー、女神案件よ」
「ユースティア神」
「あとぉ、うちの王様〜?」
三妖精の言葉に「人間の女でないなら、まぁ……」とエリザベータは矛を収めた。直近で近づいた女がいたからだろう。その少女は地獄のピタゴラスイッチを完成させてから破滅にまっしぐらである。追い込んでおいて彼女はその存在をポンと忘れていたりする。少し家を突くくらいで追い出される娘なのだ。初めから碌な人間ではなかったのだろう。そういった感想を得て、終わりだ。
エリザベータの興味関心はそう広いものではないのだ。
エリザ、多分ティターニアの発言知ったら「焼きましょう」とか言うと思う。




