16.朝の一騒動
「レイラ様ぁーーー!?」
「ショックのあまり因縁すらつけることなく……あ、顔は見せなくて大丈夫ですよ!惨事になってしまいますわ!!」
お付きの令嬢二名は1回目の反省から断りを入れる。「ハロルド様ほどではない、丁度良く格好いい、もしくは美人の方を探せば……?」などと口走っているあたり混乱している様子ではあるけれど。
「顔が良い……僕かな?」
「その自信はどこから来るんですか、貴方は」
ブライトの自信しかないセリフにミハイルが呆れたように返した。確かに可愛い系男子のブライトではあるが、あまりに自信しかない。元々「僕って可愛いからさ〜」と自分で言うタイプなので、今更である。ハロルドたちは「まぁ、ブライトだしな」と思っていた。
「まぁ、顔が良いといえばルートヴィヒ殿下ですかね」
「ふむ……確かにハロルドよりは劣ろうが、父上に似ていると言われている以上、私もそれなりに整った容貌だろう」
アーロンとルートヴィヒがのんびりとそう話し合っている。時折ギョッとした顔のクラスメイトがいるのは平民と王族が気安く話しているからだろう。
ルートヴィヒの初めての友人が平民だった頃のハロルドであるのでこれもまた今更である。それに加えて、今のアーロンは神獣から加護を得た存在である。神ほどではなくとも、その加護は重要なものであり、もしもアーロンがスノウを立派に育て上げることができれば、向こう200年ほどは国境が攻め入られることはないだろう。今はあんなに可愛い子犬ちゃんでも、その存在は重要だった。
ルートヴィヒはゆっくりとレイラに近づくと、「ラピスラズリ嬢」と声をかける。
うっすらと目を開けた彼女は、目前にある端正な顔に目を見張る。
「おはよう。ハロルドではないが、私では満足できないかな?」
ちょっぴり意地悪そうな顔である。
顔というよりは自国の王子の顔が近すぎることに耐えきれず、レイラは気絶した。
「ふむ、私でもダメか」
「ルイだと顔が良すぎるんだよ〜」
今回に関して、顔は関係ない。
男子たちのそんなほのぼの(?)したやり取りに令嬢二人は頭を抱えた。レイラは青い顔で気絶している。いきなり驚かせたルートヴィヒのせいでもあるが若干不敬である。ハロルドの影響もあるのか、ルートヴィヒが割と懐が広いから許されているが。
そんな教室の扉が開くと、「みなさまー、おはようございますわぁー!」と元気な女性の声が聞こえた。
「あら、レイラさん。気持ちよさそうに眠っていますけど、お勉強をする気はありませんのー?」
「ルイの顔近づけたら気絶しちゃいましたー!!」
「まぁ。……それはちょっと」
王族の顔がいきなり目の前に現れれば、繊細な令嬢は気絶くらいするだろうな、なんて考えながら苦い顔になったヴィクトリア。
「仕方がありませんわねー?起こしますわー!」
ヴィクトリアが手を一度叩くとその音でレイラが目を覚ました。
「妙な夢を見ましたわ……目前に殿下の顔が現れたような……」
神妙な表情のレイラに「それ夢じゃないです」というツッコミが入ることはなかった。
思い出した彼女に気絶されると面倒だった。
レイラ「覚悟もなく王族の方の顔が近くにあれば、驚くに決まってますわ!」
その前に推しの姿を見てショックを受けて気絶するんじゃないってみんな思ってる。




