1.穏やかな時間
風が生暖かくなり、木々は緑一色だ。夏を連れてくる予兆を感じさせる日差しが眩しい。長袖が少し辛くなってくる頃合いだ。今は朝だからまだ少し肌寒さが残るが、空を見上げて「今日も暑くなりそう」とハロルドは呟いた。
ハロルドが水を撒き終えると、虹のようなものが見えて妖精たちやスノウが彼の後ろで「きれー!!」とはしゃいでいる。
「わう!(おやつ!)」
収穫したばかりの野菜を目の前に尻尾をブンブン振っているスノウ。その愛らしい姿はとても神獣とは思えない。子犬にしか見えない彼に苦笑しながら、苺を差し出すと、ポンという音と共に少年の姿へと変化する。
「どれくらい食べていい!?」
「二つまでだよ。今日のおやつに使うから、小さいやつにしてね」
「大きいのはウチのだからねぇ、ハル!」
ウッキウキなリリィに「分かったよ」と言って苦笑する。
最近のハロルドの周囲は比較的平和だが、少しばかり嫌な予感を感じ始めていた。根拠のないそれがどうにも気持ちが悪い。王都の周囲では魔物が増えたと聞くが、それが嫌な予感の原因だろうかと首を傾げる。
(なんだか、それは『結果』であって『原因』じゃない気がするんだよな)
とはいえ、積極的にあれこれ手を出しているわけではないので、わからずじまいだ。そもそも、何かあったとしても対処すべきはハロルドではない。
「さ、もう戻るよ。今日の朝食当番はペーターだったな」
「もうできてるよ」
「ひ……っ!?あ、ああ。ありがとう。でも、できれば家で気配消すのやめてほしい……」
屋内に戻ろうとしたら、背後にペーターがいた。そのスキルのせいなのか、それとも癖になってしまっているのか。気配なく背後に佇む彼に心の底から驚いた。
「うん、気をつけるね」
にっこりと笑顔で言う姿は年相応だ。
最近ようやく、以前のような明るさを感じ始めてきたペーターの姿に、ハロルドは少しだけホッとした。
「やっぱり、何事もなく、平穏な毎日が一番だよな」
そんな彼の言葉に反して、平穏な時は終わろうとしていた。
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