2.砂漠の向こうより
メリークリスマス
久しぶりの人出てます
ハロルドが久しぶりの穏やかな時間を過ごしている頃、異変はもう始まっていた。
遠くから、怒るような、嘆きのような咆哮が聞こえる。けれど男はそれを楽しむように笑っていた。
「いやぁ、我が君もお人が悪い!たった一人のために平和な国を戦火に巻き込もうとは」
まだソレは自分たちの正確な位置に気づいてはいないし、怒りに燃えたソレはおそらく、敵を誤認するだろう。そうして、狂ったソレはエーデルシュタイン王国に牙を剥く。
すでにソレの怒りの原因は男の手を離れ、弟への嫉妬と怒りに支配されたバカな青年の元に委ねられた。彼がその封印を解けば、その瞬間にソレは居場所を感知して向かうだろう。
「元は、そちらの神子が大人しく我が国に来てくださらなかったのが原因。まぁ、どれほどの被害が出るかなど我々が考えることではないな」
歌うようにそう言った男は、心底嬉しそうな声音だった。
彼の瞳には、とある少年を閉じ込め、その力を搾取して、自らの主人が玉座に座る。そんな栄光の道しか見えてはいなかった。
ここに来るまでに厳しい砂漠や密林を乗り越えて、策を巡らせなければならなかった。あの恐ろしい雪がなければ、と何度考えただろうか。
雪山は自国のドラゴンの力を鈍らせ、そのせいでラムルを経由する必要があった。
失敗するわけにはいかない、と男は魔物が増えた理由を誤魔化すために魔物寄せの香水を地面に落とした。
大規模な移動は、広い砂漠の中でそれなりに目立つものだった。
たまたま知り合いに会いに行こうとしていた男の目を引く程度には。
「第三王子殿下の相手してて遅くなったけど、政争に巻き込まれる前に出て来れて良かったぜ。まぁ、嫌なものは見つけてしまったが」
紫色の髪に赤い目の男がそう呟いた。
何をやってるいるかはわからないが、知り合いに会ったら注意くらいしてやる必要があるだろうとその存在を覚えておいた。何せ、彼の知り合いは神の寵児、妖精のお気に入りのとびっきりの美少年なのだ。自国の第三王子……薬学狂いをようやく撒いた男は道の先を見据える。
「忘れられてないといいがな」
苦笑しながら馬を駆る。
目指すはエーデルシュタイン王国の王都。
アイマンという名の冒険者は、弟のような知り合いとの邂逅を楽しみにしていた。
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