魔神との結婚の真相
完結です
あれから、ヴァルの顔が見るのが恥ずかしくなり、逃げ回っていた。
逃げ回り始めてから、三日。とうとう、ヴァルに捕まった。
「ヴ、ヴァル……」
「どうして、そんなに逃げ回るのですか」
「は、恥ずかしいじゃないですか。心の声がダダ漏れだって、知ったら。幼少期からずっと、同じようなことがあったかもしれないと考えると、顔を合わせられなくて」
「ああ、それなら大丈夫ですよ。心の声は、結婚したことで繋がるものですから」
「へ?」
てっきり、セラは聖女としての契約のことだと思っていた。
というか、いつの間に結婚の契約を交わしていたのだ。どう考えても、口約束ではなくて、何らかの効力を持った契約に感じる。
「結婚の契約って?」
「あなたがしている、指輪ですよ。それを受け入れ、嵌めることで外れなくなり、私たち魔性との結婚は成立するのです。契約の印自体は、どこでもいいのですか。よく腕輪やピアスにしたと、他の魔性から聞きましたね」
うっとりとしながら、ヴァルがまた指輪を撫でる。
「え、ということは、私が指輪を嵌められるまで、ヴァルとは結婚していなかったていうこと?」
「……はい、そうなりますね」
「そうなりますね。じゃない!」
シュポー! と怒りが大爆発した。
どこで、どうやって結婚してしまったのか悩みに悩んだが、あの指輪を嵌めるまで、結婚していなかったとは。
ただの、詐欺ではないか。
「心外な。私はセラを取られたくなかったから、こういう手を取ったのです。策士と言ってください、策士と」
「策士というより、ただの逆結婚詐欺ですよ! ここは、私を冒険に連れていってくれるまで、怒りは治りません」
「ええ、では今すぐ行きましょう!」
ヴァルの手を引っ張り、城内を走る。その間に、いろんな人とすれ違い、驚いた顔ですれ違う。
「おお、セラじゃないか」
「ジン様」
並走するように、ジンがやって来た。彼の懐には、大量の果実が入っている。
「ジン様、またサボりですか」
「サボりって言うなよ。ただの息抜きだ、息抜き。それにしても……」
ジンはセラとヴァルを見比べると、ニヨニヨと笑う。
「お前ら夫婦、仲いいな。なんだ、その小指に付けた赤い糸は」
「へ?」
慌てて見ると、ジンが言う通りに赤い糸でセラとヴァルの小指が、可愛らしく結ばれていた。
そんなくだらないことをする犯人は、一人しかいない。
しかし、その犯人に入れ知恵をした、黒幕もいるはずだ。
「ヴァル! これは何ですか」
「赤い糸です。離れ離れにならないための、秘密道具ですよ」
「ギャハハっ、見事に騙されているわ!」
「犯人は、ジン様か!」
ジンは怖い怖いと言いながら、軽々と庭をかけていく。
先には、城の外に出る城門がある。
まさか、追放されてから魔神ヴァルハラルの花嫁になるとは思わなかった。
けれども、セラが考えていた自由はしっかりあるし、彼女を繋ぎ止める枷も少ない。
ただ一つ、ヴァルという重い枷がある。
多分、それは最初からのことだったのだろう。
最初は否定ばかりだが、彼と一緒にいたいと気づけたのだ。そして、気づけたから繋げられた。
ヴァルから見たら、セラは大きな籠に入れられた鳥なのだろう。
彼が張った罠に、ことごとく嵌っていく。とても、やりやすいことだっただろう。
よく考えれば、ヴァルと長年一緒にいるのだから、セラの考えていることはお見通しなのだろう。
もしかしたら、自由を欲したくせに、達成してない。と言われるかもしれない。
けれども、セラは満足だ。
側に、一緒にいたいと願ったヴァルがいるのだから。
最後まで、ありがとうございました。




