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健太の日記  作者: 蔓草登上
64/111

手を握られただけで 続編 1

挿絵(By みてみん)

続き


「寿樹は今まで健太の気持ちに全て断って来たではないか!」

「それは、分かっておる。」

「で、今さらなんなんだ?離れてやっぱり健太の方が良かったなんぞ、しょんべん臭い事たれる気か?」

寿樹はこうべを垂れたまま、上げられない。

鬼空は、笑った。

「ふっ…ふふふっ。人間とは愚かなものだな。」


「まだ、決めておらぬ。」

うつむいたまま寿樹が言う。

「健太か清一郎か?」

「ちがう。」

「なにが 違う?違わんだろう。」


「わたしは…、私は健太が好きなのか?」

寿樹の発言にビックリした鬼空、その後落ち着いて口を開けた。


「寿樹は、人を好きになった事がないのか?」


あわてて追いかけてみた、自分の過去に、勉強をして、難関をくぐり抜けて、毎日のお勤めに何年も費やする日々。人を好きになるという時間が自分になかった事を改めて知った。

最初は友達、その後右手のような存在の健太。居て当たり前、思うように動いてなんの不思議もなかった。

「寿樹は、おのれの気持ちに気が付かなんだ。」

何気なくサラッと言った鬼空の言葉が、今の自分に愚かさを痛感した。

「ま、わたしに聞いたところで恋愛に関してアドバイスは出来ないよ。」







「重症か……。恋愛に関して私は一からやり直し状態だな。」


寿樹が考えながら拝殿へ戻り、拝殿から通路を渡って弦賀と会った。


「寿樹さま。」

「弦賀。」

二人の声掛けが重なった。


「寿樹さまから。」

弦賀は手をどうぞと向ける。


「今夜は泊まって良いと言われている。」


弦賀の顔が、ほころんだ。

「そうですか。では夕飯もお作り致します。」

「スマナイ。」

「いいえ、ゆっくりして行っって欲しかったのです。」

弦賀が先ほど何を言いたかったのかがわかった。





 健太がしきりに 辺りを見回した。

仕事を終えると、寿樹を探しに出た。


寿樹は境内を歩いて、考え事をしていた。


「寿樹!あまりその格好で境内を歩き回ると御師さまと顔がそっくりだから誰かに気づかれちゃうよ。」

寿樹は赤城家では、普通の婦人服でいる。

つい、景色は見慣れたものだから、白衣をまとっているつもりで祠巡りをしていた。


「寿樹の心配しているのは キツネさんでしょ?」

健太はキツネの来る祠まで行って、様子を見せた。

なんら、変わった様子はない。

松ぼっくりの多い荒れた参道だった。

神饌しんせんで御魚が出た時は、ここのおキツネ様にお供えしているから安心してね。」

教えもしていない、キツネの餌あげを健太は伝授していた。

こういったところも、健太の良いところなのかな?と考える寿樹。

今日は、健太を見直す日となってしまいそうだった。

あぁ、杉の木はなんら変わることなく何百年も同じ場所に同じようにたたずんでいるというのに、私の心は揺れて今にも折れてしまいそうだよ。


「寿樹。」

健太が喋り出した。

「いつでも こうして帰ってきて欲しいけど。結婚式挙げたらしばらくは赤城家に居ないといけないでしょ?」

健太は顔を下げて、足元の松ぼっくりを蹴った。


「僕はさみしいな……。耐えられるかな?」

寿樹は身勝手な自分を振り返った。

健太に望と式を上げさせた自分が、どんなに卑怯だったか。そして、その闇は今自分に廻って来たのだと知った。


「恭司郎に意地悪されたら、直ぐに帰ってきてね。ううん、意地悪されそうになったらだよ。」

健太の言葉が胸に刺さって 言葉が出なかった。


社務所まで降りてくると、弦賀が窓から顔を出して声を掛けた。

「夕飯ですよ。寿樹さまどうぞ召し上がって下さい。」


その内容に反応する健太。

「夕飯食べていけるの?帰りは?」

「今日はお泊りだよ。」

健太は境内なのに大喜びをした。







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