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健太の日記  作者: 蔓草登上
111/111

夕陽を見る

挿絵(By みてみん)

BGM:♪[PINK BLOOD]宇多田ヒカル

 鬼空きくうのバイクに乗せてもらい

山を登って夕日を追っかけた。


 まだ、寿樹じゅきがいた頃を思い出した。



 最近は夕日をあまり見なくなった。

その一つに、19時にならないと日が沈まない。


我々はその頃には、食卓で食事を囲んでいる。


寿樹は僕に言った。


「見ようとしなくなったのだ」



また、トンチな話をしてきたかと思った。


寿樹だって、夕日が沈む時間には食卓へ着いている。




「寿樹は夕日を見れているの?」




「私は見れているよ」




ウソをついてる。




本当は、毎日見ていないくせに。


次の日、食卓に着いている寿樹を見つめていた。窓の外が急に暗くなったのを、食事を終える頃に気がつき、寿樹を見る。




「ほら、やっぱり。寿樹だって夕日を毎日見ている訳じゃないじゃん」



勝ち誇ったように言った。


そしたら、寿樹はまっすぐ指を指して言った。



「ソコの窓に、反射しているから夕日がいつ沈んだのかわかる」

と言った。




僕は窓の外しか、見ていなかった。確かに窓ガラスに夕日の光が反射して映っていたのだ。




食事を終えて、一番風呂の用意に向かう寿樹。


解答を得るためについて行く健太。


「そんな間接的でも、見たって事になるの?」


下着とラフな寝間着を持って出ていく寿樹。


僕は荷物を持ってあげた。


ローカを二人肩を並べて歩く。


寿樹のお腹が大きくなったせいか、気持ち歩く速度が遅い。


くどくど話す内容にイマイチと言った顔をする健太。




寿樹が脱衣所へ入ると、健太は籠に着替えを入れた。



「夕日を見ることに絶対条件はない、私が言いたいのは、夕日を見ていたあの頃を忘れていないかと言っておるのだ。」


「あの頃……、」


僕は考えながら 脱衣所を出た。


「あの頃は、寿樹に呼ばれて凄く懐かしくて、夕日(寿樹が)美しいしかったのを覚えてる だから、夕日がすきになった、毎日見るって誓った。」


「それを、忘れないようにな」


脱衣所から声が返ってくる。


「初心忘れるべからずって事?」


扉一枚挟んで会話をする。


「そうだな。」


当時は、沢山の事を考えた。


沢山の想いを夕日に託した。




大事な自分の気持ちを忘れていた。


いや、知ってたのに 後回しにした。


色々な自分の美しい気持ちを 置き去りにしてしまったと思った。




「寿樹、わかったよ。」

寿樹からの返答は、もう無かった。


僕は、君を尊敬していて好きでたまらない。


健太は思いをギュッと握りしめた。









「まだ寿樹の事を考えているのか?」


「え!?」


いきなり鬼空が怪訝そうに聞いてきたのでビックリした。


「いや、知らないならそれで良いんだ。」


珍しく気を遣って喋る鬼空が酷く気になった。


「どうして、そんな事きくの?」



「お前が話をする時は、いつも寿樹の事ばかりだからだ。」


「アハッそんな事ないよ。やだなー、鬼空が僕に気を使っちゃって!」


鬼空は僕が好きな、夕陽の眺められる開けた場所にバイクを停めてくれたのだ。



僕は毎日、夕陽を拝まないと悲しい気持ちになるのを鬼空は知っていた。


それは、寿樹を想う時だと鬼空は勝手に解釈したらしい。



「鬼空って、前から思っていたけど。本当は、とっても優しいね。」


「な、なに言ってんだ!お前こそ気を使うんじゃねー!」



赤くなった鬼空が 可愛い。



「勘違いだったら、……許して欲しいんだけど。」


「?」


「鬼空は寿樹にいたりしないの?」


「アイツとは、けた外れの能力があるから俺とは比べねー。」


「双子なのに、能力の差ってあるの?」


「気を使って言うんじゃねー!お前だって頭の良さが違うのはわかってるくせに。」


鬼空が怒った。



「僕は二人とも同じに好きだから。鬼空は僕が寿樹の方が断然好きだと決めつけてるでしょ?」


「イイコぶるんじゃねーよ。お前は寿樹の方が好きだろ。」


「愛される事に臆病おくびょうなのは、鬼空だよ。」


「……。」


「信じて欲しいよ。何年友達やってきたと思ってるの?」


「友達としか思えねーよ。」


「……そうだよね。」




なんで、鬼空を恋人にしようとしているのか自分でもわからない。


鬼空が友達と言うのならそれでいいのに、ミキとなってくれた鬼空の裏の心がどこかに有るような気がして、確かめる作業を何度も行ってしまう。


夕陽が沈み暗くなったのと、健太の心が暗く寂しくなったのが一緒で、二度と忘れることのないだろうと鬼空のバイクにまたがった。




確かめるのではなく、僕は期待をしていたのか?



鬼空の背中の服を握りしめ、


「ミキに、  なって   くれない?」




鬼空には、バイクにかき消されて、聞こえなかった。




聞こえなくていいんだ、聞こえなくて充分だよ。


僕は何をバカなことしているんだ!






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