みつあみとコロナの悲劇
今日はポカポカ日和。
日差しの下、修行の滝を抜け山道を更に登って歩くと大きく開けた場所に出る。
ここは、参拝の人も来ないしトレッキングの人でも裏の山々を超えてこないと中々来られない場所である。
今日は寿樹にもゆっくりしてもらいたくて、なかば強制的にこの原っぱへ誘ったのだ。
寿樹も久々に来たみたいで、花が咲き乱れている野原をしばらく眺めている。
健太は持ってきた大きめのレジャーシートを広げて座るように言った。
寿樹の髪をみつあみにして、咲いている花を入れ込んで編み込んでいった。
「わぁ、キレイ」
健太がさけんだ。
寿樹は嫌がる様子もなく健太を見つめた。
いや、僕の頭に終点があった。
「僕の頭、何か?」
「お前の頭にも花を埋め込んでやろうか?」
健太の天然パーマに花が絡まりそうな気がしたのだろう。
「僕は似合わないから、いいよ。」
レジャーシートにポスっと横になる。
「寿樹も横になって。」
二人で今度は空を眺める。
「今日、ご不幸あったんでしょ?」
「あぁ、良くしてくれた信者のお宅が新型コロナウイルスで一人亡くなって・・あっという間だったらしい。」
寿樹が真剣に話し始めた。
「コロナで、看病も出来ず、側にも居させてもらえず、葬式も出来なくて・・・やっと帰って来た姿は・・」
「骨?」
「白い骨だけで、家族は死に納得が出来なかったらしい。」
「それは、家族さん嘆くわけだ。」
「朝から騒ぎになってすまなかったな。」
「寿樹が謝る事ないよ。家族さんもすがる思いで寿樹の所へ来たんでしょ?」
「私もコロナがこんな事態になるなんて思いもよらなかった。」
「それは誰でもそうだよ。最後が見とれないなんて家族さんにとって悲し過ぎることだもん。寿樹も何て言ったらいいか言葉に困ったでしょう。」
寿樹は大空にハァとため息を吐いた。
ポカポカの日差しは、気持ちよかった。
二人はしばらく無言で寝ていた。
しばらくすると、人の話し声が聞こえた気がしてハッと起き上がった。
周りをキョロキョロする健太。
「どうした?周りは誰も居ないぞ。」
「今、声がしたような。」
「下の声が風で上がってくるのだ。」
「寿樹は人気者だから、こんな所をファンに見られでもしたら・・」
「最近、健太にもファンがいるみたいだな。」
「え?なんで?うそだ!そんな話聞いたことない。」
「おまえが来てから、お付きの人の名前を聞かれる。若い女性からだ。」
「僕の名前を?」
「急にニタニタするな。気持ち悪いな。」
「変な言い方しないでよ!純粋に嬉しいだけだよ。」
寿樹の中祭の助っ人として、衣装を整えたり、小道具を手渡したり。タイミングが必要な仕事までやりこなしてきた。寿樹のファンばかりと思っていたけれど、細かなところまで見ている人はいるものなんだなと思った。
昔、弦賀さんがよく着ていた祭事用の服を今度は僕が着させてもらっている。
それで、周りの人も次のお付きの人と見ていてくれているのだろう。
でも、ファンがいてくれたらそれは嬉しいな。
「まだ、ニタニタしてるのか?」
山道を降りながら寿樹が言う。
「明日、意識しちゃいそう。」
「女の子みたいなことを言うな。」
「寿樹。みつあみ可愛いよ。」
寿樹は編み込まれた花を抜くと、健太の頭に刺した。




