第2章 学級委員
チャイムが鳴ると同時に、担任が入ってきた。
1組の担任は、平野圭介。
廊下の紙にそう書いてあった。
史也にとっては2年連続同じ担任となる。
クラス分けが決まったばかりの教室では号令をかける者がまだいない。
担任の平野はざわついたままの教室を見渡し、大きな声をあげた。
「静かに!」
生徒たちはピタリと口を閉じ平野の方を見た。
平野は黒板に自分の名前を書いて挨拶を行った。
「はい、私がこれから1年間、君達の担任を務める平野だ。2年から一緒の生徒もいると思うが改めて宜しく頼む。まずは出席を取るとするか」
そう言うと平野は出席簿を開き、上から順番に名前を呼び、生徒の顔を確認していった。
元々社会科の教師でもあるため、生徒は平野の顔をみな知っている。
平野の方も、だいたいは分かっていた。
全員の出席を取り終えると、平野は出席簿を置き、教壇に両手をついて話し出した。
「まず、学級委員を決めようか。誰か立候補するものはいないか?」
生徒たちはお互いの顔を見合い、様子をうかがっている。
「宮間どうだ?」
宮間洋介は2年のとき平野のクラスで学級委員をやっていたのだ。
洋介が首を横に振ると、同じクラスだった他の生徒から「やれよ」という声が上がったが、洋介は断固として受け入れなかった。
「それなら、誰かを推薦してもらおうか」
「はい!」
真っ先に手を挙げたのは、史也の隣に座っている島田真弓だった。
「よし、島田」
真弓は立ち上がるとちらっと史也の方を見た。
「里中君がいいと思います」
史也は驚いて真弓の方を見た。
真弓は両手で頬づえをついて、史也の顔を見ながら微笑んでいる。
「おい、いったいどういうつもりだ?」
「あら?聞こえなかったのかしら?」
「ふざけるな!」
「ふざけてなんかいないわ。真面目だよ」
そんな問答を繰り返している二人の間に平野の声が割って入った。
「それじゃあ、他に推薦者もいないことだし、里中に学級委員長をやってもらおう!里中、前に出て来い」
「ちょ、ちょっと待って下さい」
平野は躊躇する史也の腕をつかむと、教壇の脇まで引っ張ってきた。
「じゃあ、里中、後の役員を決めてくれ」
「えっ、俺が・・・ですか?」
困った顔で平野の方を見た史也に平野はアドバイスを送った。
「じゃあ、とっとと副を決めてそいつにやらせればいいだろう」
史也は仕方なく副委員長を決めることにした。
「じゃあ、副委員長になりたい人」
いるわけないよなあ、そんなヤツ・・・ そう思いながらも史也は半ば社交辞令的に口にした。
すると、何と手をあげている生徒がいるではないか!
史也はその手の持ち主を確認した。
「なんだって・・・」
手をあげていたのは島田真弓だった。