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プロローグ 星が降った夜
星が降っていた。
凍るように冷たい冬の夜。
透き通った夜空から星が降った。
星は、月の光を反射しながら、地上へ舞い降りる。
その輝きは重く、命を宿して鼓動していた。
木々の葉に、川の水面に、家々の屋根に、当たって砕け、四方に散った欠片は、一層強く輝くと、闇に溶けるように消えた。
真夜中のはずなのに、降る星の光が満ちているから、辺りはぼんやりと明るい。
少年はその様子に、息をするのも忘れて魅入った。
横で、彼の祖父が白い息を吐く。
見てごらん、と、空を指さす祖父の瞳に、降る星が反射して、瞳が小さな夜空になったようだった。
祖父の顔はいつも通り穏やかなのに、どこか悲しげだ。こんなにきれいなのになぜだろう、と少年は思ったが、口にはしなかった。
祖父に頷くと、もう一度空を見上げる。
星が降る様子は、物語の中の世界のようだ。
もしかしたら、これは夢なのかもしれない。
夢だとしてもいい。
このあまりにきれいな時間を、心の奥に仕舞っておけたら、きっともう少しだけ、この硬い空気の中で息がしやすくなる。
少年は未だ降り続ける星を、必死に出来の悪い瞳に映した。
この景色を忘れないよう、頭の中にしっかりと刻まれるまで、少年は目を離さなかった。




