武将 島津義弘 第74話 東軍中央を突破する
慶長五年九月十五日 午前十時過ぎ
関ヶ原・東軍中央内部(黒田・細川隊の前列/突破方向:北西)
島津の先頭が、東軍中央の槍列の隙間へ踏み込んだ。
湿地を抜けた馬の蹄が固い地面を叩き、乾いた音が霧の中に響いた。
敵の槍の穂先が揺れ、列の中央がわずかに開いた。
馬の胸がその隙間へ押し込み、敵兵の肩が押し下げられた。
豊久が槍を前へ突き出した。
穂先が霧の層を割り、密集した敵兵の胸元へ迫る。
敵の槍とぶつかり、金属音が湿気に吸われて低く響いた。
豊久は柄を押し込み、敵兵を左右へ押し分けた。
槍の柄がしなり、敵の槍が横へ弾かれ、列の中央がさらに割れた。
豊久の馬が一歩前へ出た。
馬の肩が敵兵の胸を押し、敵の足が後ろへ滑った。
湿った草が踏み潰され、泥が跳ね、突破線の中心が北西へ伸びた。
豊久の槍が再び前へ突き出され、敵の槍と交差し、柄が震えた。
右側では、十郎太が側面の敵の動きを確認していた。
細川隊の槍が横から突き出され、角度が霧の中で揺れる。
十郎太は槍を斜めに構え、横槍を受け流した。
槍の穂先が彼の肩の横をかすめ、湿った空気を切った。
十郎太は敵の足の位置、槍の角度、押し返す力を読み続け、突破線の横幅を保った。
島津の後続が狭い突破口へ次々と流れ込んだ。
湿地を越えた兵が前へ押し寄せ、列の密度がさらに高まる。
槍の穂先が前へ揃い、兵の肩が触れ合い、馬の体温が湿気に混じった。
後続の槍が前へ突き出され、突破線が押し出されるように北西へ伸びた。
敵列が左右へ割れ始めた。
黒田の足軽が槍を構え直し、細川の兵が横から詰めようとするが、押し返されている。
黒田隊の鉄砲足軽が後列で再装填を急ぎ、湿気で弱った火縄を吹いて火を整えていた。
さらに別の鉄砲足軽が火皿を覆い、湿気を避けながら火薬を詰めていた。
敵の足元の草が踏み潰され、泥が跳ね、槍の穂先が揺れた。
火縄の煙が低く漂い、突破口の上に薄い層を作った。
その煙の向こうで、敵の列がわずかに開き、島津の突破線が内部へ伸びた。
豊久がさらに槍を押し込み、敵兵を左右へ弾いた。
槍の柄がしなり、敵の槍が横へ跳ね、列の中央が大きく割れた。
馬の胸がその隙間へ踏み込み、敵兵の肩が押し下げられた。
突破線の中心が北西へ伸び、敵列の内部へ深く入り込んだ。
十郎太が右側面の敵の動きを読み続けた。
細川隊の槍が横から突き出され、角度が変わるたびに受け流し、突破線の横幅を守った。
横槍の圧力が増すたびに、十郎太の槍が角度を変え、敵の槍を外へ弾いた。
細川隊の横押しが強まる中でも、突破線の右側は崩れなかった。
島津の後続がさらに押し寄せた。
槍の穂先が前へ揃い、兵の足音が重なり、突破線が北西へ押し出された。
湿地の匂い、火縄の煙、兵の息、馬の汗が混じり合い、突破口の空気が重くなった。
敵列が左右へ割れ、島津の突破線が東軍中央の内部へ伸びていく。
突破は、すでに「衝突」から「貫通」へ移っていた。




