24、深森
前の投稿から半年経ってる………時間って恐ろしい………
あ、あと、描写を三人称視点から一人称にしました。あんま他の人のマネをするもんじゃないね。
「なあアカバナ。もしかしてだけどさ………………口ってそのままなのか?」
「そのままとはどういう意味じゃ?」
アカバナの両頬と額に目を閉じているような線を見つけてしまった俺は、まさかあの口が人型でも出るのかと思い、とりあえずアカバナに問いてみた。そして、俺の予感はこういう時に限ってよく的中する。
「そのままというのはよう分からんが、我の『捕食』は口を開閉させて初めてできるものじゃ。今、我が喋っているこの口は紛い物で、この口で『捕食』はできんから安心せい」
「ん?てことは、アカバナは人型だと『捕食』できないのか?」
「いや、この顔も紛い物じゃ。ほれ、口はここにある」
アカバナはそう言いながら、俺の予想通りアカバナの顔が五つに裂け、大狐のときと同じ口が出てきた。今度は少女の姿なので、寄○獣に寄生されたかのようになっている。正直吐き気がするほど気持ち悪い。
「ッ!?キュ〜〜〜………」
「あれ、フィネア!?起きてたの!?って、あ、気絶してる………」
「軟弱じゃの〜」
「お前が原因だけどな………」
どうやら起きていたらしいフィネアは、バイオ○ザード並みのアカバナを見てしまい、俺の腕の中で気絶した。というか、人化したアカバナは見えるんだな。
「まあ、なんでもいいか。とりあえず、フィネアの言う通りに東に行こう」
「あ、その前に、ちと待ってくれんかの?」
アカバナはそう言うと、目を閉じて何かに集中する。その途端、チリーンとあの鈴の音が鳴り響いた。すると、どこからともなくチリーンと同じ音が呼応するようにして返ってきた。
「うむ、やはり残っていたのじゃな。あやつとの繋がりは絶たれていなかったんじゃ………」
「………………」
アカバナはどこか遠くの方を向いて呟いた。俺は、なんとなく邪魔してはいけないと思い、フィネアを抱いて太陽が登ってきた方角へ少しだけ歩いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「と、いうことは、そなたは異界の者であると?」
「そう。気付いたらネズミになっててさあ。まあ、俺の世界ではそういう小説やら漫画が流行ってたから、拒絶反応とかはなかったけど、めっちゃビックリした」
「ふむ、聞いたことがあるぞ。今向かっているかのヒノボリも、『ニホンジン』と名乗る者がおったそうな」
「まあ、あるあるだね。大抵どこかしらに先人がいるもんだよ」
「ふむ、そういうものか」
アカバナと雑談しつつ、森の中を突き進む。途中、遠目ながら鹿や狼などのモンスターを見たが、アカバナを見た瞬間に全員が逃げていった。なので、道中何も会わず、もう少しで森を抜けるとこまで来た。ここまで来たら、もうモンスターも出ないだろう。
そう思っていた時期が、ありました。
「ウキーッ!!」
「ウッキッキ!!」
「ウキーウキッ!!」
「これは、面倒なやつに絡まれたのう」
森を抜けるあと一歩のところで、緑色の猿が三匹現れた。この森の主らしいアカバナを見ても、臆さず俺達の前に現れた。バカだとは思うけど。
「ってか、デカいなこの猿。やっぱり魔物だから?」
「うむ、魔力は全ての生き物に宿り、その中でも魔力が多い者が魔物となる。魔力はその者を強大にさせる。だから、魔物は積極的に他の生き物を襲う。じゃが、こやつらは少々知能が足りなかったようじゃな。憐れなものよ」
そのアカバナの言い草に腹が立ったのか、人間の大人ほどの大きさの猿が一匹だけ突き進んできた。他の猿はそれを見てキィキィと鳴きながら手を叩いている。どうやら楽しんでいるようだ。
「ふん、猿ごときが我相手に決闘の真似事をするか。よかろう、その決闘、受けて立つ。主は手を出さないでくれ」
アカバナはそう言うと、どこからともなく出てきた蒼色の刀を掴み、見えない鞘に収めるようにして居合切りの構えをとった。それを見た猿はその辺の枝を拾い、見よう見まねで枝を構えた。
「………一手で終わらせる。それに足掻いてみせろ」
「ウキィィィ………」
他の猿が手を叩くのをやめ、一瞬の静寂が訪れる。そして、合図もなしにアカバナと猿が動いた。
キンッと甲高い音が鳴った後、アカバナと猿が場所を交換するようにしてそれぞれの得物を振り抜いていた。
「お、おん………?どっちが勝ったんだ?」
どう考えてもアカバナが勝っただろうが、結果を見るまでは分からない。しかし、やはりと言うべきか、枝を振り抜いたまま静止していた猿の胴が真っ二つになって地面に転がった。残された身体から紫色の血が噴き出す。
「キ、キ、キィィィーーーーー!!」
「ウキャアアアァァーーー!!」
同胞が目の前で殺されたからか、二匹の猿が高音の声を発し、未だ静止しているアカバナに突進した。
「ちょ、ア、アカバナ!!」
「大丈夫じゃ。こやつらはもう、死んでおる」
アカバナがそう言った瞬間、猿達の体に無数の切り傷が浮かび上がり、そこから大量の血が噴き出した。
「ウキャ………アァ」
「キ、アキ、ウキャァ………」
「ふん、自分達は安全かと思うたか。貴様らでは我の相手は務まらん」
アカバナがもう一度鞘に収めるような動作をすると、刀は光の粒となって消えていった。転生者特典とかによくある『アイテムボックス』や『インベントリ』とは違う感じだ。ということは、この猿達の死体はどうするのだろう。
俺は最初の猿を枝でツンツンしながら疑問に思った。一応はアカバナの速さについていけていたので、相当強い部類だろう。そんな魔物の素材を捨てるのは勿体無い気がする。だからといって、猿の死体を背負う気にはなれないが。
「ふむ、確かに主の思う通りじゃな。こやつらとて命ある者。それを冒涜するのは間違いじゃ。じゃが、持ち運ぶ手段がないのう」
「ん?ちょちょちょちょ待って!?なにナチュラルに俺の思考を読んでるの!?契約したから!?」
「うむ。契約は式神と契約者を強く結ぶもの。それは思考さえも統一化する。しかし、ここまで繋がりが強いのは、そなたで二人目じゃな」
アカバナが少し気になることを言ったが、今はそれはどうでもいい。つまりは、アカバナと俺の脳が一緒になりかけているということだ。アカバナは前にも契約者がいたような発言をしているので、それ専門の人がいるのだろうが、俺はそんな覚悟なんて決まってない。むしろ、今この場で解約したいくらいだ。
「ふん、ならば、我はそこの雌猫を『喰らう』が、良いのかの?」
「うぅ………………じゃあ、続ける………」
アカバナは俺の言葉にフンッと鼻を鳴らしながらも、猿の死体を集めている。
アカバナの先ほどの戦いで、俺はアカバナに勝てるビジョンが全く見えなかった。そりゃ、アカバナと契約している俺はアカバナからは傷つけられないが、失うものがあるのは、俺だけだ。万一にも、アカバナと敵対するのは避けたい。
「………………のう、我がさっき言うた言葉は覚えているかの?」
「へ?」
チリーンという鈴の音とともに、いつの間にかアカバナが隣に立っていた。どうやら、例の瞬間移動のようだ。しかし、さっき言った言葉とは………
「………………あ」
「………………そなたは結構抜けているのだな。まあ、安心せい。我はそなたと敵対するつもりはないし、することもないじゃろう。本当に、似ているな」
………恥ずかしい。考え事に集中しすぎて、思考が筒抜けなのを忘れていた。顔が真っ赤に染まってしまう。
「………可愛い」
「へ?………って、おわぁ!?」
フィネアの声が聞こえて視線を下げると、目をパッチリ開けたフィネアと目が合った。いつから起きてたのだろうか。
「まあ、猿の死体に困ってるんでしょ?私は『収納魔法』が少し使えるから、これくらいなら運べるよ」
フィネアはそう言うと、集められた猿の死体に向けて二本尻尾を振った。すると、猿の死体は何かに飲み込まれるように消えた。想像と違ったが、これがインベントリ、あるいはアイテムボックスなのだろう。
「………ってか、『護森緑猿』って群れてるとSランクだったはず………やっぱバケモンだわ」
「おい、そこの雌猫、聞こえておるぞ」
アカバナの声にフィネアは頭を竦め、俺の小さい腕の中に潜り込む。なんだろう、俺はフィネアに逆らえないのに、フィネアはアカバナに勝てなくて、アカバナは俺に勝てない。なんなんだこの三角関係。
「ここら辺の魔物は去ったようじゃな。ほれ、行くぞ」
「え?あ、うん」
アカバナはさっさと進んでいく。さっきの刀といい、戦いといい、色んなところが格好良かったのに、進んでいる方向を盛大に間違えている。神にもミスはあるもんだ。
「………………………」
アカバナはくるっと身を翻し、こちらに戻ってきた。心なしか、若干顔が赤くなっている気がする。俺はあえて気付いていない振りをして、俯いて喋らなくなってしまったアカバナとともに太陽が出る方向へ歩き始めた。




