22、遙かなる古の唄
今回は前回と打って変わって短いです
『ヒノボリの言い伝え』
『ヒノボリ』の首都である『東神教庁第一都市』、通称『東教都』呼ばれるその都市には、古くからある唄が言い継がれてきた。その唄の名は、『赤花の唄』。
『我、今から唄うはこの世の終わり。そして、それに立ち向かった巫女の話である』
『ある日突然、海が荒れ、地面は割れ、天は雲に覆い隠された』
『そして、海の彼方より、一つの山と見違えるほどの巨獣がやってきた』
『人々は逃げ惑い、犬は吠え、猫は隠れ、鼠は消えた』
『そして、その巫女は現れた。巫女の名は、カグヤ。このヒノボリを救った者である』
『カグヤは力を振り絞り、大きな結界を張った。巨獣はそれに阻まれ、一時足を止めた』
『我らヒノボリの民は、その間に逃げおおせた。しかし、カグヤだけは逃げなかった』
『やがて結界は破れ、巨獣はまた歩き出す。それでも、カグヤは折れない』
『カグヤはかの禁術を使った。ヒノボリの秘密の術式。それは莫大な力を得るかわり、術者を殺すもの』
『カグヤは最後まで戦った。それは、我らのためではない。カグヤが終始呟いた『赤花』のためである』
『巨獣が通りすぎた後、草は枯れ、木は燃え盛り、家は倒れ、岩だけになったヒノボリの地に、カグヤは倒れた』
『カグヤは死ぬそのときまで、『赤花』の名を口にした。我らは、カグヤを救世の巫女として、手厚く葬った』
『我らは、カグヤの意志を継ぐ。カグヤが守ってくれたこのヒノボリを、今度は我らの手で守る』
『そして、必ず『赤花』を探し出す』
『これは、ある一つの救国の話であると同時に、我らの長い長い探し物の唄でもある』
『我らは探し続ける。カグヤの墓標の前に、『赤花』を添えられるように』
この唄がこんなに長いのは、彼らの探し物をしている時間を表すためかもしれない。この唄は、逆大樹ができた頃から語り継がれているという。
そんな、数千年前からできたとされる唄の通り、ヒノボリのある草原には、カグヤが愛用していたとされる鉄扇が立っている。まるで、かの『赤花』を待っているかのように。
また、鉄扇の近くに落ちていたとされる拳大の二つの鈴は、ヒノボリの国宝にされている。カグヤの話では、これは『共鳴の鈴』と言い、もう一つの対となる鈴が近づいたとき、自然に鳴ると言い伝えられている。そのためか、ヒノボリの皇子は常にその鈴を持ち歩き、『赤花』を探しているという。
さて、長々と話したが、これはあまりにも出来すぎていると言って、カグヤの存在を否定する者がいる。
最近、『東神教政府』に目をつけられ、あまり話題にならなくなったが、どうやらあの一族は『赤花』を忌まわしきものとして代々言い継がれているそうだ。
その昔、『赤花』のいた村に住んでいた巫女の一族らしい。そう聞くと、『赤花』は花の一種ではないらしい。だが、その一族は『赤花』の名を嫌い、文献には残してこなかったため、『赤花』の正体は未だ不明だ。
しかし、我々のやることは変わらない。これまでも、これからも、『赤花』を探し続けるのだ。
著者・サカイタ シゲル




