第5話 またよろしく
「あらあら、色々あった後の再会だものねぇ。積もる話もあるわよねぇ〜。」
タマの反応に違和感を覚えたのも束の間、タウラの明るい声にかき消された。
「は〜い!ジャックちゃんおまたせ!これ、お代ね〜!」
ジャックは恐縮しながら、差し出されたスパイスの代金を受け取る。
「もー、いつも助かってるんだから、
もっと堂々としてていいのよぉ〜?」
「いえそんな…!いつもご飯までごちそうしていただいてますし…。」
町の住人ですらないジャックにも分け隔てなく接し、何かと気に掛けてくれる。
タウラのお人好しな性分には、これまで何度も世話になっていた。
しかし、人付き合いそのものが得意ではないジャックにとって、親切にされればされるほど、どう接するのが正解なのか分からなくなってしまうのである。
にこにこと笑うタウラへ頭を下げながら、ジャックは代金を荷物へ仕舞い、帰り支度を始めた。
聞きたいことは聞いた。
聞きたくないことまで聞いた。
タマも元気そうで何よりだ。
…もう、それでいい。
これ以上ここにいても仕方がない。
まだ行く予定の場所も残っている。
…今後はミラの方に釘を刺すことにしよう。
「それじゃあ、私はこれで…。
タウラさん、ごちそうさまです」
「あいよぉ!またよろしくねぇ〜!」
「もう行ってしまうんですね。もっと色々お話ししたかったのですが、残念です…」
食べかけのパンをかじりつつしょんぼりした様子のタマ。
⸺出来ればもう会いたくない。
喉元まで出かかった言葉を飲み込み、ジャックは社交辞令めいた笑みと共に軽く頭を下げた。
外の空気を吸うと、張り詰めていた肩の力が少しだけ抜けた。
「…はぁ」
誰に聞かせるでもなく、深いため息をひとつ。
真面目なのか変人なのか。
危険なのか善良なのか。
少なくとも本人に悪気はなさそうだった。
だからこそ厄介なのかもしれない。
脅しにも似た言葉を口にした後の、タマのあの反応…。
少し引っかかってはいるが、詳しく聞いたところで十中八九理解できない気がする。
(…やっぱりミラの方に言い聞かせるしかないわね)
ジャックは気を取り直すように鞄の位置を直すと、次の目的地へ向かって歩き出した。




