第3話 遭遇
「あ、わ、わぁあぁあぁ〜!!!」
ジャックは椅子をガタガタとさせながら立ち上がり、後ろに数歩後ずさる。
咄嗟の事に間抜けな声を上げてしまった。
イスごとひっくり返らなかっただけまだマシだ。
(タマ…!?!?なんでタマがここに!?!?)
「えへへ!ビックリしましたか?」
タマがスープの付け合せのパンの皿を机に置きながら、いたずらっぽくウインクする。
「おやおや!どうしたんだい?そんな声出して!」
騒ぎを聞きつけたのか、タウラが店の奥から顔を出した。
「あっ、女将さんー!この方ですよ!ボクの命の恩人!」
「あらそうなの!海に流れ着いたタマちゃんを介抱して、町まで連れてきてあげたんだってねぇ!ジャックちゃんだったなんて!ま〜偉いじゃないの!」
「そうなんですよ〜!まさかジャックさんがこのお店に来られるとは!ボク、いつ挨拶しようかとドキドキでしたよ〜!」
「小さい町だからねぇ!こうやって巡りあわせもあるさね!あっはっは!」
…ジャックはしばらく口をパクパクさせていたが、二度、三度と深呼吸すると、すうっと心を落ち着かせ。乱れた椅子を戻し席に座る。
和やかに盛り上がる二人を横目に、運ばれてきたスープを口に運ぶと、芳ばしい香りが鼻に抜け、じんわりとした旨味が舌へ広がった。うん。美味しい。
「…それで、なんでタマがここにいるわけ」
「そんなこんなで、今はタウラさんのご厚意の元、角灯亭で住み込みで働かせてもらってます!」
ジャックと同じメニューを、テーブルの向かいでもりもりと食べるタマ。
どうやら、管理局で4日程拘束された後、3日前からここで働き始めたという話らしい。
…管理局に4日。
そこが少し引っかかる。
来訪者の場合、簡単な種族確認や聞き取りを受ける程度で、半日もあれば終わると聞いていたのだが。
「…あんた、また変な事をしたんじゃないでしょうね」
「失礼な!そんな誰彼構わずやりませんよ!」
ぷんすかと抗議しながら、タマはパンをちぎる。
「ボクだって、月を追放されてから長いんですからね!
ちゃーんとそこらへんの立ち回りは、心得ているつもりです!」
えっへん!と何故か誇らしげに胸を張るタマ。
…やはり月を追放されたのは、それ絡みか。
あの日の憶測が確信に変わった。
「それで聞いてくださいよ!管理局に預けられたボクの!語るも涙!聞くも涙!
それはそれはも〜ひどいっ!全身ひん剥かれて!お尻の穴まで丸裸で!ご開帳で!」
乙女の純潔が傷ついた!!と、ワザとらしくスンスンと泣き真似をするタマの話を適当に流し、ジャックは真顔でスープをすすった。




