目覚め
今からしばらく子ども編である武術編が続きます。これからは武術がメインになっていきますが、あくまで仁を使った戦闘において武術は補助扱いになります。
現実で分かりやすく説明すれば、時速100キロの車が突進してきて武術があればどうにかなる可能性はまだありそうな気もしますが、超巨大な東京ドーム並の大きさの鉄球が時速100キロで突っ込んでくるとして武術でどうにかなるだろうか?何を足掻いて武術で小細工しようが潰されて終わり、ということです。
具体的には仁の量が5倍以上になると、武術による小細工は通用しなくなることが多いです。
ライの闘いは終わってしまった…
だがまだカナ、ユリ、カリル、の闘いは終わってはいない。これから彼らの死闘が始まる。
場面は変わってカナ、剣術使いと対峙している。
ドアを開けるとそこには広い部屋、ただ奥の方にカーテンがかかっていた。
ベッドもなくカナは違和感を感じて再び扉に手をかける。しかし、扉は開かない。
そこで気づく、不味い状況だと。
奥から剣を持った人間が出てくる。
「悪いがお前には死んでもらう」
ヒュン、鋭い太刀筋がカナを突然襲う。咄嗟に避けるがそれでも前髪が落ちる。
「マジか〜剣術使いかー相性最悪じゃーん。ってかなんでこんな所で襲われてんの私。つかヤバくないこれ?」
「行くぞ。」
凄まじい剣戟。
「舞剣」
舞いのように滑らかな動きで攻撃をしてくる。カナは降りかかる剣術を全て躱す。
「このくらいはさすがに避けてくるか……なら。」
「彩蓮剣」
すぅ〜、揺れるような掴みどころのない動き。その動きはどこか緩慢としていて…ハッ
いつの間にか目の前に剣が
「うっヤバっ」
剣の切っ先が左腕に浅くだが入る。
「こいつ、多分私より普通に強い…どうしよう…勝ち筋を探さないと…どう考えてもこのままだとジリ貧よね…」
「飛翔剣」飛ぶ斬撃だ。
「旋体風林」
姿勢を低くし、回転するような動きで飛ぶ斬撃を躱し、相手の懐に飛び込む。
「胴突き」「面揚打」「蓮撃」
怒涛の3連撃、これには相手も僅かだが堪えたようだ。
「逆さ刃」
相手の返し技がくる。これを見事に躱し、
「足払い」
さらに相手の右足下に足払いを決め、体勢を崩す。
「鎧通し」
相手の体に手を当て、その手の上からさらなる重ね掌打を繰り出し、内臓を破壊する技。
ドンッと音がなる。
「やった!!決まった!!」
「グハッ…」
流石にダメージが入ったようだ。
が、すかさず剣による攻撃がくる。これを躱し、一度距離を取る。が、ダメージは入っている。
「今が畳み掛けるチャンス!!」
カナは相手の攻撃を躱しまた懐に飛び込もうとする。
「楓流舞」
意識を躱すことだけに集中し、相手の攻撃の線を読み、それに合わせて軽やかに動き回る技だ。カナは相手の攻撃を躱し続ける。
「ここだ!!白疾拳」
相手に当たる、しかし……
「クッ…」
急所を外された…
「グッ…やるな。なら、これはどうだ。」
「円舞剣」
「えっ?」
まさか反撃がくるとは考えてもなかったカナ。
先ほどの舞のような華麗な動き、しかしながら先ほどよりも数段鋭くなった剣筋で躰を切っていく。
「くっ……」なんとか隙を見つけて反撃したいと思っているが、相手の攻撃を躱すことで精一杯だ。
カナは躱しきれず全身に切り傷をつけられてしまう。
自分の渾身の鎧通しを受けておいてこの身のこなし。
それだけでも絶望なのだが、さらに剣と武術は相性が悪い組み合わせの一つだ。
もし相手の剣術を止めたいのなら、カナはこの相手の剣術を躱し続けた上で、相手の懐に潜り込み、その剣を握っている手を無効にする必要がある。リーチがただでさえ短い武術家にとっては至難の技である。
一か八か「白刀止め」という選択肢もあるが、この相手の剣捌きを見ていれば望み薄。
「ほう。まだ立つか…ならば」
カナは嫌な予感がした。
「旋龍閃!!」
「消え……た?」
一方、場面は変わってユリ。
背後から迫ってきた刃、突然現れた殺気に咄嗟に体が動く。
「……何者ですか…」
もちろんお面で顔は見えない。
「悪いがお前には死んでもら…」
「一の型 素晒の太刀」
「気が早いな。だが、手裏剣、避けられるか?」
辛うじて躱すが足と手に掠ってしまう。
日刀流居合は一撃必殺の技、だがそれ故にどうしても技後に隙ができてしまう。
だが、それでも…
「一の型 素晒の太刀」
素晒の太刀、言わずもがな日刀流の全ての技の基本となる技。
左下の鞘から抜かれた刀は斜上へ綺麗な半弧を描く。
また躱される。
「毒手裏剣」
「うっ…躱し…きれない…」
左脇腹に掠る。
それでも…
「一の型 素晒の太刀」
「吹き矢」
右脇腹に刺さる。
「一の型 素晒の太刀」
「もう見飽きましたね。そろそろ毒も効いて…」
「ニの型 立閃の太刀」
これは鞘から抜刀する時、鞘の入り口を上に上げ、刀をそのまま上に引いて、自分の目の高さくらいから勢いを利用したまま真横または少し上段にかけて一刀両断する居合だ。
「ほう。ここに来てニの型ですか…ですが…」
やはり躱されてしまう。だが、今までと違う剣筋、避けた後の反撃までできる余裕は生まれない。
「八の型 俊足の太刀」
「もうそろそろ終わりにしましょう。かげ…」
相手がいい終わる前に一瞬にして目の前にまで現れて美しい半弧が描かれる。躱されてしまったのだ。
それでも……
「六の型 軸芯の太刀」
「もう無駄なことはやめましょう…陰法…はっ…!」
ポタッポタッ、と赤い血が床に垂れていく。
「血?何が起きた…私がダメージを負ったのか?なぜ?どうして?これは…突き?あぁ油断をしすぎてしまったか…」
そもそも居合自体に突きのイメージはない。その上、散々鞘から抜かれて左からくる斬撃を何度も意識づけた上での日刀流唯一の突き技。
油断した相手ならば対応を誤ってしまうだろう。そして何より油断し、逆をつかれた相手に対応できるほど一撃必殺の技は甘くない。
居合に突き技はない、これが常識だ。
いつもと同じ型から一瞬で放たれる突き技は前もって知らない限りは不可避の技だ。
だからこそこの技は安易に使って良い技ではない。絶対絶命の時にしか使えない技だ。
だが一撃必殺の居合でもまだ完全に相手を倒しきれていない。やはり実力は相手の方が遥か上。念押しのもう一撃が必要だ。
鞘ごと上側に持ち、刀を上から下へと振り下ろす。
「ハァ、ハァ、ハァ……四の型 天地の太刀」
ちなみに日刀流には1〜15(後に増加可能性あり)の型まである。10以降の型はいわゆる上位技であり、身につけるのは至難である。今のユリでは使いこなせる型は少ない。10以下の型でもいくつか難しい型もある。6の型、8の型も取得難度は高い。
場面は変わってカリル。
「銃使い…厄介すぎるな…」
「多夥弾」(タユカダン)
「はぁ?多すぎるだろ!!転身の術!!一度に何発撃ってんだよ!!無理だろこれ!転身の術!!」
なんとか弾を避けきる。
転身の術は自分の位置を変える技。今のカリルだと3〜4mが限度であるが。。
「跳弾」
「クッ…軌道が読めねぇ。それなら爆手裏剣!!」
跳弾が爆手裏剣の爆風で相殺され撃ち落とされる。
「煙玉!!」
シューーっと、煙が辺り一面に広がる。
「芯」
即座に反応される。
「跳弾連弾」
即対応されるが…
「陰法師」
陰の中に潜り潜む技。転身の術も陰法師も仁を使ったかなりの高等技。この年でここまで使いこなせるのは才能以外の何物でもない。
ライが所属するクラスでは武術がメインで教えられているが、忍術だけは特殊な立ち位置だ。煙玉、手裏剣、クナイなどを使った基本技以外は武術と違って仁を使えることが前提の技が多い。だが忍術はこの国特有の職業であり、それゆえに使い手も多い。その為、このクラスでも忍術コースがあるわけだ。
厄介な跳弾連弾だが、唯一、安置といっていい場所がある。それは相手がいる場所だ。跳弾はその本人に当たることはない。
「陰影殺」
陰の中からクナイを使って繰り出す一撃必殺の技だ。しかし、躱される。
「マジか!!必殺の技だぞっ!!躱されるとか、あり得ねぇ」
だがさすが忍び、動揺は表に出さない。即座に攻撃に移る。
「戟呪」「多重手裏剣」
仁を込めた手裏剣の攻撃
「速射」
すかさず全ての手裏剣が撃墜される。
だがその隙に相手の懐に入り込む。
「忍者の体術、どこまで対応できるかな?」
…………
「閻縛掌」
「無忍脚」「霧切り舞」「虚空斬」
「グハッ、、グッッここまでとは……やるね。素直に関心したよ。悪いが手を抜いている余裕は無さそうだね。本気で行く。」
オーラの量が跳ね上がる。
「あっヤバいやつじゃね??これ??」
「零距離射撃」
「陰法師!!」
ドドドドドンっと弾が発射される。だが、その弾は当たらない。が、
「クハッ」
陰に入る寸前にカリルから血が流れる。
躱した零距離射撃の跳弾が直撃したのだ。
「悪いがお前には容赦しない。」
ゾッ……
この闘いで初めてカリルは恐怖を感じた。
「俺、死ぬんじゃね??」
「跳弾連弾!!(本気)」
先のとはレベルが違いすぎる。目で追うことは愚か、弾を見ることすらできない。
「影法師!!」陰法師の上位互換の技。
だが、、
「悪いが君に隙はもう見せんよ。」
跳弾と跳弾がぶつかり合い、幾つもの火花が生まれる。それが光となり、陰が無くなる。
「あ、死んだわ、これ」
ドドドドドドドドドドドン
と何発もの弾がカリルに撃ち込まれる。
場面は変わって
「モキュ?モキュ、モキュ、モキュ、大丈夫モキュか?」
ライの耳元でなにやら囁いている可愛らしい?生き物がいた。
名前は…強いていうならモキュモキュか。
だが、誰よりも長く彼と同じ時を共にした生き物だ。
「モキュ、モキュ、心配モキュよ〜。とりあえず危険はなさそうなのは確認したっぴけど、どうすれば意識を取り戻してくれるっピ〜?」
相変わらず耳元で囁いている。
「う……、あっ……」
ライが意識を取り戻す。
「良かったモキュ。大丈夫だったモキュね。じゃあ安心して巣に戻るッキュ。」
モキュモキュが居なくなってしばらく経つと…
ライの意識がはっきりしてくる。
何か…聞こえた気がしたが…気のせい…だろうか…
「こ…こは……いったい………」
ライは目を覚ました。
しばらく呆然としつつ、やがて頭が回り始める。自分が置かれている状況を整理し始める。
いくばくか時が経っただろうか…
ガチャンとドアが開く。
「おっ!!目を覚ましたみたいだね。ライ君。大丈夫かい?」
そう声を掛けるのはガンマ先生だ。
「すまないね。君には全てを話さないといけないね。」
そう言いつつ、今回の件について話しを始める。
今回は実力を図るテストであったということ。
他の3人についてはどのくらい成長したかを図るテストであったということ。この学院の先生や先輩が闘った相手であった事などなど。
まさにライにとっては寝耳に水、思いもよらない話であった。
ライ以外の3人は先生と闘っていたようだ。
え?見かけたことくらいあるだろって?
いやいや自分が小学6年生だった時に小学3年生の担任が誰か知っていたかい?
武術の授業はそれぞれ専門の先生が別の場所で教えているからまず別の武術を習っている生徒が会うことはない。その上、仮面もつけていたしね。
それは先生同士も同じ、仲の良い先生同士なら技のことも知ってるかも知れないけど、普段関わりがない人同士だと技の詳細までは漏れない。
そしてライが闘ったのは"粉玉のケイル"というあだ名がついているほどの実力者。最年長のケイルだ。
ただでさえ仁についてはまだ覚えて間もないライだ。それにしては十分健闘しただろう。他の3人はもっと健闘し評価されていたのは内緒である。
「さて、今回の件で分かったことがある。君は武術に関して紛うことなき天才だね。一目見れば大体の技をある程度再現可能なようだ。」
そう。ライは武術に置いて天才だった。一目見れば大体のオリジナルの技のコツを抑えた動きができるようになるし、奥義級の技でもどんなに遅くとも1ヶ月あれば身につけられるほどの類を見ない才能を持っている。
一兆人に一人の才能と言っても良い。
だが、仁については別だ。仁についてももちろん十分に優秀な部類には入っている。そういう意味では才能はある。ただ最上級でないことだけは確かだ。
ことこれから仁を使った世界に踏み込んでいくにあたって、ズライクのような無双する圧倒的な仁は持ち合わせていない。これがライの現実である。
仁は時に武術を裕に超える。武術だけでは補うのに限界がある。それほどに仁の力は強大なのだ。
まぁ何はともあれ、学院でのライの初任務はこれにておしまいだ。これからライはあらゆる武術を学んでいくことになるだろう。
ここからライの目覚めーー
いやライの物語が始まるのだ。




