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転生してもムショクでした ~無能と呼ばれた『無色』の魔導士は色に染まって無双する~  作者: 越水けい
藍の章

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二十四話 亡霊の末路


 アルフとシェヘラの戦いも、終わりが近づいていた。両者ともに魔力はほとんど残っていない。アルフは尚もシェヘラを圧倒していた。


「何やってるんだ……あいつらは……」


 アルフはドラゴンに乗ったテイマーと白鯨に乗ったトオルの激しい戦いを見て、余りの壮大さに困惑する。


「アルフさん! こっちに特大の魔力で技を撃ってください!」

「何を言ってるんだ! そうしたらお前も巻き込まれるだろう!」

「それでいいんです!」

 

 突拍子もないことを言うトオルに驚きながらも、アルフは頷く。


「よそ見とはいい度胸だね。死ねぇ!!」


 隙を見てシェヘラがアルフに布による連続攻撃を仕掛けるが、アルフはあっさりとそれを見切る。シェヘラには、魔力の消費によって急激に老いが訪れているようだった。


「これが一国を脅かした亡霊の末路かよ」


 アルフはため息をつくと、自身の魔力を振り絞り、最後の一撃を白鯨に乗ったトオルを背にしたシェヘラに繰り出す。


「奥義、覇海斧」

「何故だぁぁぁ! 私は! まだ、死ぬわけには……!」


 嵐のような海流はそんなシェヘラの断末魔さえも飲みこみんだ。技を食らった彼女は、寿命そのものである魔力が尽き、散っていった。




 トオルとテイマーは、それぞれ白鯨とナイトメアドラゴンに騎乗して、海上で空中戦を展開していた。


「あの『不死』が破られただって? ――っ!」


 テイマーが驚愕の表情を浮かべる。

 その驚愕もつかの間、俺はアルフが放った技がこちらに向かって来ているのを確認すると、こちらの切り札となる魔法を詠唱した。


「――カウンター!」

「グヮォォォウ!!」


 その一声で技の流れが、テイマーとドラゴンに向かうものに変わる。シェヘラを滅ぼした究極の魔法は、ドラゴンに直撃し、致命的なダメージを与えた。ドラゴンは苦しみに悶えている。

 そう。俺がエリアセントラルでカウンターを食らった回数は三回。それに対してカウンターを使った回数は二回。つまり一回分だけ、カウンターの魔法を使える魔力が俺に残っていたのだ。


「御子ちゃんの魔力を取っておいていたのか。最高だ。それだよ。その力が欲しいんだ。君が黒に染まれば最強になれるんだ! 染まってくれ! トオル君!」


 テイマーは既に、生命開放魔法の副作用で、ドラゴンと体が一体化し始めていた。ドラゴンは苦しみながらもブレスのチャージを始める。それに対抗して、俺もとどめの一撃を用意する。

 藍色の魔力を刀に合うように作り変えて、俺はこれまでにない新しい技を作り出す。


「奥義、富岳百景!」


 俺の言葉と共に、海上に大波が発生する。その大波に白鯨が乗り、その勢いのまま、俺は並と共にドラゴン、そしてテイマーを両断した。


「無色の魔導士……流石だよ……これなら均衡を崩す鍵にも……」


 テイマーはそう呟くと、たった一枚の黒い羽根を残して消滅した。


 世界一壮大なサーフィンを終えた俺は海に落下すると並によって砂浜に押し出された。気づいた頃には白鯨も消えていた。


 海を見ると、そこに近づく一つの黒い影があった。銃の魔導士だ。


「回収……完了」


 彼はテイマーが残した黒い羽を拾うと、自身を巨大な銃の銃弾に見立てて、発射し、飛んで行った。


「――あ、ちょっと!」


 彼を追ってアカリが現れた。俺はその姿を見て安心する。


「トオル! いや、他のみんなも、満身創痍ね。すぐに治療しなきゃ!」


 彼女は俺に駆け寄り、俺に手を差し伸べる。俺は彼女と初めて出会った時のことを思い出す。

 いつまでも手を差し伸べてもらってばかりじゃいられないな。


 そんなことを考えながら、俺は膝をつき、立ち上がる。


「無事でよかった。他のレンジャーの人たちも! 町の人たちを助けてあげて!」


 俺の無事を確認すると、彼女はすぐさま残ったレンジャーたちに声をかけ始める。


「アカリ……手をかけさせて、ごめん」

「いいの。謝らないで。今は休んでいいのよ。トオルは十分かっこよかったわ」


 アカリは爽やかに笑うと、他の負傷者の元へ走っていった。


 また俺は、彼女の笑顔に救われてしまった。




 戦いの後も数週間の間、俺たちはエリアネイビーに滞在し、復興を手伝った。中でもダルバット中心部の被害は甚大で、復興には他のエリアからもたくさんのレンジャーたちが派遣された。


「すまなかった。俺たちの諍いに君たちを巻き込んでしまった」


 すっかりマスターとしての威厳を手に入れたアルフが頭を下げる。


「いえ。こっちの因縁もあったので丁度良かったですよ。ダルバットも何とか機能を取り戻せて本当によかったですね。――モルも、ありがとう」

「トオルさん。ありがとうございました。元はと言えば私のわがままだったのに」


 彼女も数週間前と比べると顔つきが変わっていた。


「いいんだ。結果的にも俺たちが来ていて正解だったよ」

「次に会えるのは多分、学園の入学試験ですね。今年は強者揃いで過去最高に厳しいって噂ですよ」


 モルが久々に笑顔を見せる。

 学園の試験か。確かアカリやリツたちが受けて落ちたんだっけ。次の試験まではあと四ヵ月ぐらいか。


「そりゃ大変そうだな。俺も頑張らないと」

「お互い強くなってまた会いましょう」


 俺とモルはお互いに目を合わせて笑った。

 その後、俺たちは馬車に乗り込み、エリアホワイトへ向かった。



 馬車の中でアカリが思い出したように言った。


「そういえば、ライラさんに化けたシェヘラと話しているとき、トオルは部屋の外にいたのよね?」

「うん。そうだね」

「じゃあ、もしかして……」


 アカリは薄目で俺を見る。


「話なら聞いてないよ。女性同士の話を盗み聞きするのは流石に気が引けるよ」

「よかった……」


 彼女はほっとしたように言う。


「ところでどんな話をしてたの?」

「いや……それは……あ! 桜が咲いてるわ!」


 話を逸らすように、アカリは外を見て言った。本当に隠し事が下手なんだな。

 それよりも、確かに外には桜が鮮やかに咲いていた。俺たちの知らないうちにエリアホワイトには春が来ていたらしい。


「本当だ。きれいだな。それに、やっぱりアカリは桜が似合うな」

「すぐにそういうこと言うんだから。私なんかより桜を見てよ」


 俺は少しからかったつもりだったが、意外にも彼女の顔には悲しみとも喜びともとれるような、複雑な感情が見て取れた。『私なんか』というフレーズに引っ掛かりながらも、俺はその疑問を口にはしなかった。



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