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なろうテンプレについて ④

 さて、なろうテンプレという話をする上で外せないのがこのサイトの性質である。

 小説家になろうの最大の特徴は「ユーザーが多い」ということである。


 無料であるとユーザーが多いのは当然の話で、その理由としては

・経済的合理性

・金銭のやりとりがないということは、責任が発生しない。

 この二点が大きいと考える。


 責任とはサイト運営、作者、読者の三者に向けての言葉だが、その内容は詳しく語るとそれだけでこの話が終わりそうなのでざっくり作者と読者だけ。

 要するに作者側は書く作品に完結や定期更新、事前に絶対規約違反しない、一定の人気といった「量と質」を求められない。

 読者側は読むことに時間以外のコストを掛けなくて良いので、いくらでも面白い作品を探せるし、面白くない作品を読むのを途中でやめても損はしない。

 ハードルが低く、誰もが機会を得る。

 その性質を持つサイトは多いが、その中でも特にユーザー数が多い、つまりその性質が強く発揮されるのがこの「小説家になろう」というサイトだろう。


 さて、たとえば普通の単行本の小説で、レビューに「本屋で立ち読み。一巻の最初しか読んでいないですが駄作でした、すごく面白くないです」と書けば失礼極まりないだろう。買え、せめて最後まで読んでから評価しろ、と。

 つまりすでに書籍の状態で世に出る物語の評価とは「切りが良いところまで見た評価」である。「序盤は何が起こっているかわかりませんでしたが、中盤からだんだん明らかになり、最後でどんでん返し!」みたいな作品も高評価になるわけだ。

 一方で、このサイトでは「二十話まで読めば面白いから」と作者が言ってもなかなか読んではもらえない。読者は冒頭数話を読んで「余り面白くないな」「何が起こっているか判らないな」と思った瞬間に読むのをやめるということがありうる。

 タイトルとあらすじを見て「面白くなさそう」と思った時点で読まれないのはどちらも同じなのだし、「ここまで読めば面白い!」も読者が言う分には伸びる可能性はあるけど。

 逆に、書籍の場合は最初の一巻で面白くなければその後はない。だがwebの場合は「何文字かけても面白く読ませ続ければそこまで読んだ評価を得られる」という武器もある。

 つまり書籍は一冊分(八万文字~十六万文字ぐらい?)で評価され、webでは冒頭一話からと、読んでいる人にとっての最新話まで総合の二つの軸で評価される。

 完成度よりも「今面白い」が求められているのだ。

 まあこの話は、この手の創作談義においては有名なので他でも聞いたことはある人もいるだろう。再確認、そして初めて聞いた人にといったところだ。


 もう一つ、書籍は発売されてからは「人気が出ないと宣伝される機会が少ない」「発売した後は買ってもらわないと作品を見てもらえない」が、webでは「更新の度に読んでもらう機会がある」とも言える。

 これは長い作品が累計で総合ポイントが高くなる理由である。五十話で完結する物語は、新着一覧に載る機会が五十回しかない。一方で三百話で完結した話は三百回。単純に六倍読んでもらう機会があると言えるだろう。

 もちろんここに「ランキングにのった」「レビューをもらった」「サイトで紹介された」などの他の要因での加算があるだろう。しかしそれらはあくまで読者の評価による機会である。能動的に、それでいて自然にサイトで読んでもらう機会の土台は更新である、と考えている。

 また、このサイトにおけるポイントとは「一人2~12点の好感度」である。作品の技術を見るものではない。よって十人の人間が「最高の出来だ」というよりも千人が「そこそこ面白かった」というほうがポイントは高い。

 これも長編が有利な理由であり、同じおもしろさを感じたなら一話より十話、十話より二十話楽しませてもらった方が満足感を抱き、愛着をもつということである。その作品に楽しませてもらった質と量でポイントをつけている、といえる。


 短編が評価を取りやすい、と完全に逆のことも言えるのがこのサイトの面白いところだ。短編は読んで「面白かった」と感想を抱くとその時点で評価する。短期間にポイントが多く入るとランキングに上りやすい仕組みのこのサイトでは「多くの人が読み、評価する時期がかぶる」短編は評価を得やすい。長編だと「十話まで読んでから」「最新話まで読んでから」と人によって評価タイミングがずれてしまう。

 投稿すれば確実に読んでくれる読者がいるが、数は多くない、という作品、作者が一定評価、知名度を確保する上では短編は有利である。短編投稿がなろうで人気を得る準備段階として有利という話は友人の女性作家も言っていた。彼女曰く「女性向けの方が作者読みされやすい」とのことだった。


 さて、評価のつけかたはだいたい終わった。

 もう一つが「テンプレートの形成のされ方」である。

 短編はよくわからないが、長編は間違いなく流行が存在する。ではランキングがどうして似通ったものが増えるか。よく言われるのは「人気が出たら大喜利が始まるから」というもの。それも正しいと思う。

 わかりやすい例としては、ここ三ヶ月、Twitterで話題になっていた「100日後に~」という作品をご存知だろうか。ニュースにもなっていたので、知らない方は少し調べてみると出てくると思うので説明は省略。

 あの作品が話題になってから、多くの絵、漫画を描く人たちが「100日後に~する〇〇」という類似ネタを投稿していた。あの作品が好きなわけではないが、なるほどと思ったものだ。話題になった大きな要因は、話題、ネタとしての共有可能性である。

 日常会話での「もしも三億円当たったらどうする?」と同じ「もしも100日後に死ぬとしたら自分はどんな日常を送る?」という話題を提供したのがあの作品であり、「誰が何をする話か」「どれぐらいで完結する予定か」という「アイデアとキャラをすべて詰め込みました」という改変可能なコンセプトそのもののタイトル。この二点をもってあの作品は大きな知名度を獲得し、流行、つまりある種の「テンプレ」を生み出した。

 小説家になろうにおけるテンプレが、大喜利となるのは「こういう面白さですよ」と説明しやすいキーワードがあって、改変しやすいからだろう。そして一つの作品が全ての人に楽しまれることはないが、それぞれの作者が改変する中で不満点を解消、軽減していけばどれかしら好みに合った作品が見つかる可能性はある。そして読者はいくら読んでもコストはないため、たくさんある中から自分の好みの作品を見つけようとするのだ。

 そしていくつか「その構造内ではパターンが出尽くして、それぞれのパターンで質が高い――完成形が出てきた」という状態になると、それ以降がアイデアレベルでは劣化コピーになるので流行は収まっていく、ということだ。


 作者側からしても、痛手は少ない。私は書いた長編作品は全部ブクマ三桁以上、完結させるわ! ぐらいで書いているが、全員がそうでは無い。

 筆の速い、ぽんぽんとアイデアと文章の出てくる作者からすると、運や流行もある中で一つ一つにそんな執着してられるかよ、というのもあるようで人気が出なければ消すとか適当な区切りの良いところで完結させるとかして別の作品を始めようっていうのも一つの考え方らしい。

 ちなみに私が全て完結させるつもりで書いているのは、一つは合理的戦略から。私が作品を完結させる作者だと認識してもらえれば、読者に安心して読み進めてもらえるだろうという「作者単位でのポイント稼ぎ」である。もう一つが、私にそれができる能力があると考えているからだ。短期的な流行はともかく、長期的にこのサイトで楽しまれてきた土台のようなものがあって、その感覚は自分の好みと大きく離れていないだろう、と。そこまで下手でもないならある程度は評価されるだろうし、完結させるのも自分のモチベーションと執筆能力なら死なない限りは大丈夫だろうと思っている。

 そして何より、好きで書いているので自分の作品のラストは自分が見たいからというのが大きい。嫌いな文章何万文字も書けるわけがない。最後が気になるし、書いた後の達成感も欲しい。だから最後まで書いているので、私は「作家は作品を完結させなければならない」とは思っていない。完結はさせたいし、できるだろうぐらいにしか思っていないのである。

 これだけ書いて今後エタったら黒歴史だけど、これぐらい背水の陣にしておくのも良いだろう。以前の作品を書いているときもそんな感じだったし。


 それはともかく、前述のような人からすると「書いてあたればラッキー」と取りあえず書いてみるというのはありなのだろう。もちろん「俺は今度こそこのネタで人気取って書籍化してやるんだ!」と意気込んで書いている方には失礼かもしれませんが。

 ハードルが低いというのはそういうことで、トライアンドエラーが簡単である、ということである。

 流行にのった作品も、挑戦的な実験作も存在できるのである。


 人数が多いと、その中に「うまく魅力の中心を掴んだ人」「長く更新できる人」「話が純粋に面白い人」「文章がうまい」「キャラが魅力的」エトセトラ……が現れ、人気を得てランキングを駆け上がる。

 もし作者が少ないと、「結局面白いのはこの人のこの作品だけか-」みたいな読者が増えて、その流行は偶然面白かった作品で終わる。そもそも読者が少ないと、書いた作品に反応がないので衰退する。もし全く読者の反応が不要な作者がいるとすれば、彼らは非公開設定にしたり、自分のノートや執筆ソフトで書いた後どこにも投稿することなく置くだろう。

 そういう風に、人が多ければ競争や流行が生まれるのではないだろうか。


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