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スキル、異能、チートなど 1

 なろうの流行の前から、特殊能力による戦いというのはエンタメ作品の要素の一つとしてあった。

 ライトノベル、アニメ、漫画とその範囲は広く、異能バトルなどとジャンル分けさえされるものだ。

 

 タイトルにあるスキル、異能もしくは超能力、チートは厳密には違う使われ方をする。

 たとえばスキル、というとなろうでは「表記にある能力」であることが多い。ゲームの中でステータスに表示される、レベルアップやポイントなどで新たに取得できる特殊な効果を発揮するものであったり、異世界にいってステータス画面を見ると「料理」や「剣術」などと表記されるものになる。もちろん、異能や超能力、チートなどと呼ばれる「その人独自の特殊能力」もスキルと呼ばれることがある。しかし今あげたような表記される能力について「異能」とはあまり言われない。その点は不可逆的だと思う。

 

 一方、異能と超能力はほぼ同じような使われ方をするが、「人間ができることの延長線上にある突出した才能」は異能と呼ばれたり、逆に「透視や予知、念動力などの人間にはできない超常現象の能力」を超能力と呼んだりする。

 超能力を異能と呼んでも特に問題は無いだろうが、天才のことを超能力、とは呼ばないだろう。

 

 そして最後、チート。これがまたネットスラング→なろうときて今やライトノベルで普通に使われる言葉となってきているようにも思える。もちろん、ライトノベルで普通に、というのは「主人公がネットに慣れ親しんでおり、結果俗っぽい呼び方として会話の中で使うことがある」とかそういうニュアンスである。

 しかしながら元は「反則、イカサマ」から派生しただけあってそもそもが特定の能力を指す言葉ではない。それをもって能力だと呼ぶのだから実に個人の裁量、その場の雰囲気、作品によって意味は異なり結果全てを網羅しようとすると実に広い定義となる。

 

 その上であえて意味をというよりは、作品での使われ方をあげていくと、以下のようなものがある。

 ・反則的な能力(圧倒的、弱点がない)

 ・努力しないで得た力(神から得た。運良く手に入ったなど)

 ・説明のつかない異能(ゲーム的、定義や理屈が不明)

 ・個人がありとあらゆることに才能を持つこと

 ざっと思いつくものをあげたが、他の使われ方をしているものもあるだろう。 

 とまあ、そもそもなろうでたくさんの人気作品を読んでいるとなんとなくこのあたりの感覚というのは共通認識ができてしまう。故にタグに、あらすじにチートといった言葉を入れることでその共通認識に落とし込み、作品へ入りやすくしようというわけだ。


 ここではあくまでざっくりとした使われ方から見ているので、こうした事柄に元から知識や関心の高い方には過去ではこうだった!とか元々はーとかまあ思うところがあるかもしれない。

 それについては感想欄で言ってくれても、流してくれてもいいかなぁとは。違うぞ!と言われるとちょっと怯むけど。

 

 しかしながら今回はそこが本題ではない。

 今回の本題は、これらの用語を組み込んだ設定はどのような面白さがあって人気になっているのだろうか?ということだ。

 

 さて、まずスキルの話をしよう。

 この場合のスキルは「人間ができることの延長線上にある技術を表記し、レベル制にしたもの」として扱う。これがスキルの定義ではないが、これに絞らないと他のものとの区別が付きにくい上に話がしづらいので。

 この設定の優れたところは「分類と巧拙が明確に誤解なく表される」ということにある。

 たとえば本来人間の能力とはもっと細分化されており、その総合的な結果のみが能力として出てくるはずだ。料理一つとっても「食材の知識」「味の想像力」「栄養を考慮できるか」「切る、煮るなどの調理技術」「見た目を綺麗に整えられるデザインセンス」などなど。そのあたりは少年ジャンプで今やっているような料理バトル漫画を見てるとわかるのではないだろうか。

 それを「料理」の一言に表してしまい、「料理スキルLv5」などと書いてしまうわけだ。すると誤解なく万人に料理がうまいとわかる。

 

 たとえば


 彼の料理は凄まじい。

 誰も見たことのないような食材を、迷うこと無くズバズバと切っていく。それを豪快に鍋にいれて、黒い調味料を投入。火が通るとあたりには独特の匂いが広がり、何人かはたまらないといった顔をしている。中には様子のおかしなものがいる。

 出来上がった料理を差しだされた審査員の三人は食べるのを躊躇っていた。しかしその視線は料理に釘付けだ。一口食べると机に突っ伏し、泣き出した。

 

 この描写を見た時に「美味しそう」「もしかしたら不味いのか?」と思った人と「もしかして美味しいオチかな?」「不味いんだな」でおそらく分かれるし、どちらの可能性もある。 

 これの味の評価は食べたもののセリフに左右される。吐いたり、不味いと叫んだり、なんてものを食わせてくれたんだ!と詰め寄るかもしれない。もしくは「うまい!」「なんだこれは!」とガツガツ食べ出すかもしれない。

 ここに「香ばしい香りが」「豪快でありながら繊細に同じ大きさに切られていく」「調味料が鍋の中に溶けだし、じんわりと食材に染み込んでいく」といった好意的な評価が増えると美味いとわかる。しかしどちらかというと、匂いにたまらないというのは、耐えられないほど酷い可能性もあるし、見たこともない食材というのがゲテモノである可能性もある。

 こうした文章は「明確な評価」「前後のストーリーつまり文脈」をもって読者に伝わる。作っているのが優れた料理人であるとか、山育ちのガサツな少年なのかとか。

 つまり物語で「突出した評価を伝える」というのはストーリーによる説得力と、一定以上の文章力が必要になってくる、というわけだ。

 

 スキルはそれを一気に省略する。

 例の料理漫画では料理バトルのたびに審査員を用意している。彼らはほぼ全てのバトルにおいて(話の展開上、例外がある)公正で舌にうそをつかず、優れた味覚と知識をもって審査する。

 そうしてようやく優劣をつけられるが、スキルにおいてはたった一言だ。

 

 スキルレベルがAさんが8でBさんが5である。

 

 そう、数字で優劣が決められてしまう。

 もちろん同じスキルレベルでも経験の差があったり知識の差があったりする作品はある。それはあくまで「スキルは補正」という設定をとっているのだろう。スキルの補正は圧倒的だが、努力でそれを補うことはできる、と。

 

 この省略というのはつまり、話のストーリーが見たいとか戦闘での勝利が見たい、賞賛と萌えが見たいだとか、そうした「早くみたい所につれてって」というものだ。

 

 次に成長が目に見える、というメリットもある。

 剣術がうまくなりました!と言われても、それを出すためにそのたびにいちいち過去に戦った強い相手ともう一度戦わせてその時との差を描写で出して……というわけにはいかない。やはり新たな敵も出てくるし、ワンクッション挟んで主人公の強さの再確認をしつづけるとテンポが悪くなるかもしれない。成長確認のために用意される戦いや敵が出てくることになる。

 それを「レベルが上がりました!」とするだけで済ませられるのは非常に楽だ。

 これがないと「以前はゴブリン2体に手こずった初心者がもうオーク3体に勝てた?どういうこと?」みたいに強さの設定の矛盾が発生する。それを「彼は3日でここまで強くなりました」と言わねばならない。そしてそれを納得させるために主人公が強くなる描写を挟まなければならない。戦うたびに相手の動きが読めるようになり、技術を吸収していく天才の感覚を。

 

 あと人に見せるだけで一発で強さが分かるものある種便利な話である。

 これまでだと強い敵を倒して示さねばならなかった強さが、そいつにステータスを見せるだけで「えええ!剣術スキルレベル5って騎士団長レベルですよ!」とか言って終わらせられる。上の比較とも近い話である。

 

 もちろんデメリットもある。

 たとえば今言った手法は、昔からある「展開、理屈、ストーリーで魅せる」というのを好む人たちからすると「手抜き」「物足りない」と見えることがある。今言った省略は「言われているだけでそれを見た訳では無いし、そもそも鍛錬で得るべきそれを何故アイテムみたいに手に入れられる?」という疑惑からくる説得力の欠如によるものである。

 

 私としては、成長が数値化されることは悪い事ではない、と思う。

 私は単純に数字でパワーバランスがインフレするのを抑えたり、適切な成長を考えて管理して覚えていちいち表記するのが面倒くさいので多分作中ではやらないだろうが。

 さらには序盤で得たものや、能力を道具のように扱うという意味合いでも汎用性の高い設定である、と思われる。

 それにそうした手法は「うまく描写できないから逃げで使う」よりももっと攻撃的に使いたいので、少なくとも「はっ、そんなの使わなくても強さも凄さも伝えられるだけの力が俺にはあるぜ」って言えるようになってから使いたいな、と。

 文章だけで何でもできるのが小説のいいところだ(なんていい話風にまとめるけど、要するに長くなったから異能とかチートについては次の話に回すだけのことだった)

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