After Story3
「俺たちさ、何回ここの海に来たかな」
「……覚えてないよ」
浜辺に座り、2人で寄り添う。
「俺も覚えてない」
ははっ、という隼斗さんの笑い声が、耳元で聞こえてくる。
本当に。
よく飽きないなってお兄ちゃんに言われるくらい、何度も何度もここにきた。
ここは、特別な場所だから。
「……なぁ、波瑠。
小さい頃にここでした約束、覚えてるか?」
隼斗さんが急に昔話を持ち出してきた。
「…覚えてるよ。
『次は2人で海に行こう』でしょ?」
あたしが言うと、隼斗さんは「そう」と頷く。
「もう約束は果たしてるけど…。
『次』も、『次の次』も同じだと思うんだ」
そして隼斗さんは、真っ直ぐあたしに向き合う形になる。
「社会人になっても…、結婚しても…、おじいちゃんおばあちゃんになっても…。
また、この海に来よう?」
そう言って隼斗さんは、ポケットから四角い箱を取り出した。
「今すぐには無理だけど、必ず迎えにいく。
絶対に波瑠を守る。
だから…」
箱の中には、小さな宝石の付いた可愛い指輪。
「俺と結婚してください」
それは、あたしへの誕生日プレゼントでもあり、プロポーズでもあった。
「………ぅ……、は、はい…」
「…ぷ。
波瑠、ブサイクになってるし」
「だって……、嬉しいん…だもん…っ」
あたしは嬉しさのあまり、ダボダボと涙を流していた。
それはもう、みっともないくらい。
呆れてるかな、と思っていると、クスッと笑い声が聞こえる。
「………。
そんなとこも…」
隼斗さんは、あたしの目尻に軽くキスをした。
「愛してるよ、泣き虫さん」




