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After Story1
「わぁっ…、綺麗…!」
あたしは、車の窓から見える海を眺めていた。
「それ言うの何回目だよ」
隣で運転しながら笑う隼斗さんは、ちょっぴり焼けている。
「何回見ても綺麗なのっ」
8月25日。
松浦波瑠、本日19歳になりました。
「波瑠の方が綺麗だよ」
「……最近そういう冗談よく言うよね」
「冗談じゃないよ」
クスクス笑う隼斗さんは、今日もカッコいい。
…じゃなくて。
「ねぇ、何で誕生日のデートが海なの?
あたし遊園地とか行きたかった」
隼斗さんと同じ大学になって約5ヶ月。
大学生活はゆったりしてるけど、最初は慣れるので精一杯だった。
夏休みになってやっと遊べるようになったのに、隼斗さんは3年だから忙しくなった。
もうあまり遊ぶ時間がないというのに、選んだのは海だった。
「いいじゃん。
俺海好きだし。
俺たちの始まりなんだし」
隼斗さんにそう言われると、変に納得してしまう。
ここの海に来て、お互いが気持ちを伝えて、付き合うことになった。
言わば、あたしたちの交際の始まり。
誕生日が始まりの場所。
うん、いいかも。なんて。




