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パッと顔を上げると、目の前にはしゃがんでこちらに背を向けている隼人さん。
「波瑠、おんぶ」
えぇぇ!?
「だ…ダメっ!
あたし重いし、それにっ…」
恥ずかしすぎて心臓爆発する!!
「早くしてくんない?
この体勢キツいんだから」
逆ギレしそうな隼人さんの勢いに押されて、おずおずと背中に乗る。
あっ…。
隼人さんの背中、あの頃より広い…。
あの時のことを思い出しながら、ボーっとしていた。
すると隼人さんが、歩きながらまたしゃべり始めた。
「俺もね、あの時波瑠と離れて、すごくつらかったんだ。
イライラしてお袋に当たったこともあった。
波瑠のいない生活なんてどーでもいいやって…」
「………」
あたしは黙って隼人さんの話を聞いた。
「だからもう、なるべくヒトと関わりたくなかったんだ。
波瑠との思い出をなくしたくなくて。
でね、波瑠と再会して、言葉にできない気持ちがこう…ぶわあっと膨らんで、話しかけたら波瑠ってば記憶なくしてるし」
「ぅ…」
「記憶なくすくらい辛かったんなら、側にいない方がいいのかもって思ったけど……無理だった」
「………」
「見かける度に泣いてるし、性格もウジウジしてたし、ほっとけなかった。
なにより、俺が我慢できなかった」




