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ポツ─ポツ─
「雨…。
もしかして夕立…?」
後少しで家。
早く帰らないと、と思い走ろうとすると、後ろからガッと左腕を掴まれた。
「えっ…」
振り向くと、そこには会いたくない人が…
「隼人さん…っ!?」
息を切らした隼人さんがいた。
「見つけたっ…」
ゼェゼェと荒い呼吸を繰り返しながら、隼人さんの手は、しっかりとあたしの腕を掴んでいた。
「あっ……」
ダメ…。
隼人さんを見ちゃダメ…。
見たら涙が……。
「波瑠っ……、なんで…無視すんの…」
「………」
「俺…波瑠が、心配で…」
あれ…?
もしかして…。
「電話に…出てくれないからっ…、探し回って…」
もしかして…、今息を切らしているのは…あたしのため…!?
「えっ…あ、あのっ…」
「ねぇ…波瑠…」
次第に強くなる雨。
隼人さんの手は、さっきよりも力をなくしていた。
でもあたしは、その手を振りほどくことが出来なかった。
「隼人さっ…」
「お願い、波瑠」
え?
気がつけば、あたしは隼人さんによって抱きしめられていた。
「は、隼人さん…!?」
「お願いっ…、お願い、波瑠…!
お願いだから…俺の側から離れないでっ…」
あ…れ…?
この人は……ダレ?




