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あたしは、ただの臆病者。
隼人さんが好きと気づいたなら、告白すればいい。
あの女の人は誰!?と問いただせばいい。
もしダメだったら、素直に諦めて前に進めばいい。
諦めきれないなら、アピールし続ければいい。
でもあたしには、何も出来ない。
何もする勇気がない。
断られるのが怖い。
「彼女だよ」と言われるのが怖い。
諦めきれないのはわかってる。
でも、しつこいと思われるのが怖い。
嫌われるのが…怖い…。
もう、どうすればいいのかわからなかった。
臆病な自分をひっぱたいてやりたい。
でも、いざ喝を入れて話そうとしても、手が震えて電話すら出来ない。
なんて情けないの!って…、自分で怒りたくなった。
「ふぇっ…」
泣き出したあたしに、沙柚は静かな声で言った。
「波瑠が怖がりなのは、性格だからある程度仕方ないとして…、隼人さんを無視するのはよくないでしょ?」
沙柚の言う通りだ。
あたしは、臆病になりすぎているせいで、せっかくのチャンスを無駄にしている。




