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「…ん…、あっ…あたしまた寝て…」
うたた寝から起きて、ボーッとする。
濱野くんのことよりも、あたしには気になることがある。
それは『夢』──。
正確にいえば、夢で見る『あたしの記憶』。
近ごろ、夢を見る度思い出す。
7歳より前の記憶。
何で急に記憶が戻り始めたのかはわからない。
だけど、今はそれはどうでもいい。
問題は、記憶を思い出す度、動機がするということ。
思い出した記憶は、ほとんどが隼人さんとのこと。
そして、起きてから必ずと言っていいほど、キュンとしたりドキドキしたりする。
……病気?
もうすぐ夏休みが終わる。
そうしたら、沙柚に相談してみよう。
あたしは静かに決意して、少しだけ勉強をして寝た。
この時あたしは、お母さんたちの言った言葉をすっかり忘れていた。
『知らない。覚えてない』
『思い出さないほうがいいかもね』
その言葉が何を意味するのか、何も考えていなかったから。




