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サァ…サァ…と、波の音がする。
辺りがオレンジ色に染まる頃、あたしは浜辺でうずくまっていた。
「はる、何してるの?」
話しかけてくるのは、まだ幼い隼人さん。
「かにさんみてたの」
あたしは、足下でチョコチョコ歩く、小さくて可愛い蟹をずっと見ていた。
「あっ、あっちにもいる!」
2m先に蟹を見つけ、追いかけようと立ち上がった瞬間、ビュッと強い風が吹いた。
そして、
「……!!
あたしのぼうし!」
被っていた麦わら帽子が、高く高く舞い上がり、海へ落ちてしまった。
あたしなんかが取りにいける距離ではないことは、見ればわかる。
でもそれは、隼人さんが譲ってくれた大切な麦わら帽子だった。
無理にでも拾いにいこう。
そう思って歩き出すよりも早く、隼人さんが駆け出していた。
「はやとおにいちゃん!?」
隼人さんだって子供だ。
そのまま進めば、やがて足が着かなくなってしまうことくらいわかっているはずなのに、隼人さんは決して足を止めようとはしなかった。
「はやとおにいちゃん!
あぶないよ!」
声を掛けても届かない。
腰までしかなかった海水は、すでに隼人さんの口元までいっている。
ダメっ…死んじゃう…!
泣き出しそうになった時、海に浮かんでいた麦わら帽子が消えた。
……え?




