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えっと…、
これは…どうすればいいのかな…。
訳がわからずボーッとしていると、隼人さんが歩いてきた。
え、ちょ…どうしよ…、どうするべき…?
焦ってはいるものの、視線すら逸らせないあたしは、ただ黙って見ているだけ。
「波瑠」
名前を呼ばれて現実に戻る。
気がつけば、手が届く距離にいた。
隼人さんが、ゆっくりと右手を伸ばす。
その指先が目尻に触れた時、びっくりして目を瞑ってしまった。
フッと笑う声が聞こえたと思って目を開くと、隼人さんが優しい笑顔で笑っていた。
「波瑠、目ぇ真っ赤」
そう言われた瞬間、ぶわあっと一気に顔が赤くなった気がした。
「あっ…え…、えっと…」
「ぶはっ。
波瑠たまんない」
急に吹き出したと思ったら、お腹を押さえて笑う隼人さん。
あたしは恥ずかしいんだかムカつくんだかで、いろいろ混乱していた。
「…は…、隼人さんなんて知らないっ」
拗ねて家に帰ろうとすると、ガッと手首を掴まれた。
「…ごめんっ、冗談だから。
波瑠、おいで」
たとえ怒ってたとしても、笑顔でそんなことを言われてしまっては断るに断れない。
あたしは手首を掴まれたまま、隼人さんについていった。




