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Another Story1
6月22日──。
それは、ある女の子にとって特別な日。
この話は、その少し前──15日に遡る。
────…………
「あ、松浦」
昼休み。
沙柚が用事でいなかった時、あたしに近づいてきたのは
沙柚の彼氏─山本竜二くんだった。
もともと面識がなかったあたしたちだけど、沙柚の彼氏、沙柚の友達ということで、メアド交換まではした。
でも用はないので、一度もやり取りをしたことはない。
メールですら話さないのに、学校で話すなんてことはありえない。
そんな彼が、今日、初めてあたしに話しかけてきたのだ。
「沙柚なら今いないよ…?」
もともとヒトと話すのが苦手なあたしは、その言葉を聞く前に、頭の中で勝手に相手の意見を考えてしまう。
竜二くんの用は、もちろん沙柚にあるのだと思っていた。
でも、この時は違った。
「いや…松浦に話があるんだ」
「え?」
あたし…?
「沙柚の、誕生日について」
そう。
6月22日──
それは、
沙柚の誕生日だ。




