先輩の教え
初の冒険へ出発!先輩から早速学んでいこう!
王都アルディアを出発したシアンとシルヴァは、北の森へ続く街道を歩いていた。
朝の空気は澄み渡り、街の喧騒はすでに遠くなっている。
シアンは腰のナイフと棍棒を何度も触り、落ち着かない様子だった。
そんな姿を見たシルヴァは、小さく笑う。
「緊張してるな。」
「……はい。」
シアンは苦笑した。
「初めての依頼ですから。」
「それでいい。」
シルヴァは歩みを止め、街道脇の広場へ向かった。
「少し時間がある。戦い方を教えてやる。」
シアンは目を輝かせた。
「お願いします!」
シルヴァは地面に一本の枝を立てる。
「まず覚えろ。冒険者は強い奴が生き残るんじゃない。」
そう言うと、枝を軽く蹴った。
「生き残った奴が強くなる。」
シアンは真剣な表情でうなずく。
シルヴァはさらに続けた。
「だから無茶はするな。勝てない相手から逃げるのも実力だ。」
「逃げるのも……ですか?」
「命があれば、また戦える。」
その言葉は重かった。
数え切れないほどの戦場をくぐり抜けてきた男だからこそ言える言葉だった。
シルヴァは一本の木を指差した。
「棍棒であの木を叩いてみろ。」
シアンは勢いよく振り下ろす。
鈍い音が響いたが、木はほとんど揺れない。
「力みすぎだ。」
シルヴァは棍棒を借りる。
「見てろ。」
軽く一歩踏み込み、腰を回転させる。
ドンッ!
先ほどより小さな動きなのに、木全体が大きく揺れた。
「すごい……。」
「腕だけじゃない。」
シルヴァは自分の足元を指差す。
「足、腰、肩。全身を使って振る。」
シアンはもう一度構える。
今度は教わった通りに足を踏み込み、腰をひねる。
ゴッ!
さっきよりも重い音が響いた。
「いいぞ。」
シルヴァは珍しく笑みを見せた。
「筋は悪くない。」
シアンは照れくさそうに頭をかく。
「ありがとうございます!」
「だが、武器は棍棒だけじゃない。」
シルヴァは今度はナイフを抜かせる。
「ナイフは敵を倒すためだけの武器じゃない。」
「え?」
「縄を切る。薬草を採る。罠を外す。料理にも使う。」
シルヴァは腰のナイフを抜き、近くの枝を素早く削った。
あっという間に一本の木の杭が出来上がる。
「冒険者は戦うだけじゃない。生きる技術を持つ者だ。」
その言葉は、シアンの胸に深く刻まれた。
再び歩き始めた二人。
しばらくすると、シルヴァが静かに言った。
「最後に一つだけ教えておく。」
「はい。」
「仲間を信じろ。」
シルヴァは前を向いたまま続ける。
「一人で戦おうとする奴ほど早く死ぬ。」
「仲間を守り、仲間に守られる。それが冒険者だ。」
シアンは力強くうなずいた。
「はい!」
その返事を聞いたシルヴァは満足そうに笑う。
「よし。講習は終わりだ。」
その時だった。
遠くから慌ただしい足音が聞こえてくる。
傷だらけの若い冒険者が街道を駆け下り、二人の前で膝をついた。
「た、助けてください!」
息を切らしながら青年は叫ぶ。
「北の森でオーガが暴れています! 討伐隊が全滅しかけています!」
シルヴァの表情が一変する。
「予定より早い実戦になったな。」
彼は大斧を担ぎ直し、シアンを見た。
「さっき教えたことを忘れるな。」
「はい!」
シアンは棍棒を握り締め、シルヴァの背中を追って北の森へ駆け出した。
新人冒険者としての本当の試練が、いよいよ始まろうとしていた。
新人のシアンはどんな活躍を見せるのか?




