第9話「全開」
セーフティーカーが離脱し、レースが再開する。
『レース再開、レース再開、10秒以上のギャップがあればピットインさせる可能性がある。覚えておいてくれ。』
「分かった!」
このタイヤ交換でおそらくチームはファステストラップ(そのレースの最速タイム)を狙いに行くのだろう。
F1ではレギュレーション改定までは10位以内でファステストラップを記録した選手には1ポイントが送られていたのだ。
「ファステストラップポイントも狙うために攻めますか。」
アクセルを踏み込む。
軽快に走り抜けていく。
結果、ハードタイヤながら、ファステストラップ記録した。
ファンたちは、彼の走りに、この男は何回我々を驚かせるのか?と話題にしていた。
「タイヤを酷使しすぎたな。さすがにハードタイヤでも限界が…」
『OK、松下、この周タイヤ交換しよう。もう限界だろ?』
「はい、滑ってます。もう交換したいです。」
『後続とも11秒。許容範囲だ。入ってきてくれ。』
2度目のピットストップ。
寿命は短いが、高い性能を発揮できるソフトタイヤを装着する。
再びコースに戻っていく。
『今の作業で3位になった。ただ、前の2位のマシンは追いつける。』
「分かった。」
リズミカルに鈴鹿を駆け抜けていく。
ストームの言う通り、2位のマシンに追いつくことができた。
鈴鹿名物の130Rにさしかかる。
「…アウト」
マシンをアウト側に動かす。
そのまま130Rという難易度の高いコーナーで大外刈りといういつの日かのアロンソのような走りをしてみせた。
松下の全開の走りは止まらない。




