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 第348話 『 目を覚ましやがれ! 』



 「 悪ィな、遅くなった 」


 ……俺はギルドと怪物の間に割り込んだ。


 「んで、ニヶ月振りだな――……」


 俺は怪物の方を真っ直ぐに見つめる。


 「 カノン……! 」


 ……それは変わり果てた仲間の姿であった。


 「何があってそうなったのかは知らねェが、優雅に茶でもしてくれそうな雰囲気でもねェみたいだな」


 俺はカノンからギルドの方へと視線を逸らした。


 「ギルド、カノンに何があったか知ってるか?」

 「すみません、わたしもさっき来たばかりなんでわかりません」

 「……」


 ふむ、どうやら何だかわかんないけどカノンが暴走しているようであった。


 『 首、折ロ 』


 ――カノンが俺の首を狙って腕を振るう。


 「タツタさんッ!」

 「了解」



 ――ゴッッッッッッッッッッッッ……! 俺は振り向きもせず裏拳をカノンに叩き込んだ。



 カノンは堪らず地面を転がった。


 「要は、全部コイツから聞き出せばいいってことだな」


 俺は〝空門〟を抜刀して、ギルドの方を向いた。


 「俺が取り敢えずカノンを捕獲する。お前はサポートしてくれ」

 「何ですか、そのアバウトな指示は」


 流石のギルドも呆れて溜め息を溢した。


 「任せた」

 「……はあ、やればいいんでしょ、やれば」


 ――ドッッッッッ……! 俺はカノンの方へと飛び出した。


 「……〝超・闇黒染占〟」


 俺の身体に黒い魔力が絡み付く。



  終   焉   の   光



 「ギルドッ……!」



 ――閃ッッッッッッッッッッッッッッ……! 破壊の光線が俺に迫る。


 しかし、俺は構わず突っ込んだ。


 (信じてるぞ、ギルドッ!)



  終   焉   の   光



 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! ギルドが〝終焉の光〟を撃ち込んで相殺した。


 「ナイスアシスト」


 ――俺はカノンの目の前まで到達する。


 「 よっ 」


 『 来 』



 ――ドドドドドドドドドドドドッッッッッッッッッ……! カノンの身体から骨の刃が飛び出した。 



 『ルナァァァァァァッ……!』

 「あっぶなッ」


 ……しかし、俺はそれも辛うじて回避していた。


 「ははっ、そのパターンは初見だったぞ」

 「笑ってる場合ですか!」


 ギルドに怒られる。


 「わかってるさ、それにこれでもバリバリ本気だ――」



 ――斬ッッッッッッッッッッッッ……! カノンの骨の刃を全て切り落とした。



 「よ」

 『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッ……!』


 ――カノンが一挙に間合いを寄せて殴り掛かってきた。


 「ギルド」

 「はい」



 ――斬ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! ギルドの光の刃に斬られ、カノンの首から上が吹っ飛んだ。



 「ナイス不意打ち」

 「伏せてくださいッ!」



 ――閃ッッッッッッッッッッッッッッ……! 破壊の光線がすぐ上を通り抜けた。



 「すげェ、生命力だな」


 そう、カノンは吹っ飛んだ顔から光線を放ったのだ。


 「だが、代わりに再生が遅れてんぞ」



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 俺はカノンの生首に鉄拳を叩き込んだ。



 『イギャァッ!』


 生首は堪らず吹っ飛ばされた。


 『なっ、なっ、なーーーーーーーーーーッ!』


 ――ギュルッ……! 千切れた生首が胴体の場所に戻った。


 『おれェぇえ』

 「なるほど、少しばかり乱暴にしても大丈夫そうだな」



  終   焉   の   光



 「……タツタさん」


 ――×6


 「これはちょっとヤバいですよ」



 ――閃ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!! 計六発の光線が一挙に放たれた。



 「ギルド、下がっとけ」


 ――俺は〝空門〟を構えた。


 「巻き込まれっぞ」



        超



 ――そして、〝空門〟は振り下ろされた。



   黒    飛    那










 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!!!!



 ……二つの巨大な力が衝突し、周囲一帯を吹き飛ばした。


 「ナイス、ギルド。お前は本当に良い仕事をしてくれる」


 そう、ギルドは自分だけでなく、ドロシーの方にも光の楯を展開していてくれた。


 「そちらこそ流石です。今の一撃、〝終焉の光〟六発分に相当する威力でしたよ」


 確かに、カノンの〝終焉の光〟は全て消し飛んでいた。


 「まったく、あなたは少し目を離した隙にまた強くなりましたね」

 「そりゃどーも」


 ギルドの称賛の言葉が照れ臭かった。


 「タツタさん――」

 「何だ?」


 「 上です 」


 ――カノンが俺達の真上にいた。


 そして、その手は既に俺達の方へと向けられていた。


 「手からも出せんのか、それ」

 『 タ匕 ネ 』


 ――破壊の光線が俺達へ放たれ



 ――ガッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 俺は素手で光線を殴り飛ばした。



 「まだ威力が十分に出てない光線なら素手でも弾けるぞ――それと」


 ――スッ……。ギルドがカノンの真横にいた。


 「お前、弱くなったか?」



 ――閃ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 零距離の〝終焉の光〟がカノンに炸裂した。



 『 ガッ  ゴッ   ガッ

     ギッ   ガッ  ガッ 』


 ――そして、そのまま森の奥まで吹っ飛ばされた。


 「久し振りの再会だからどれだけ強くなっていたかと楽しみにしていたのに、あんまりガッカリさせるなよな」


 カノンが吹っ飛ばされた方向へ話し掛けても返事は返ってこなかった。


 「早く目を覚ませよっ、馬鹿。本当のお前じゃなきゃ手応えねェんだよっ」

 『……』


 ……やはり返事は返ってこなかった。代わりに何かが動く気配があった。


 「ギルド、ここから先は手を出さないでくれるか」

 「……タツタさん」


 俺の言葉にギルドが心配そうな眼差しを向けてくる。


 「ここから先はカノンと二人で話したいんだ」



 ――カノンがすぐ目の前まで迫っていた。



 『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッ』



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 咆哮と同時に拳骨が俺の頬に叩き込まれた。


 「――効かねェな」


 ……しかし、俺は怯みすらしなかった。


 「そんな軽い拳、一ミリも響かねェんだよッッッッッッ……!」



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!! 俺の魔力を込めた拳骨がカノンの頬に叩き込まれた。



 『――ッッッッッッッ……!』


 カノンは勢いよく地面に叩きつけられ、地面が衝撃で弾け飛んだ。


 「立ちな! お前が目ェ覚ますまでぶん殴ってやっからよ……!」

 『ガアッッッッッッッッッッッッッッッ……!』



  終   焉   の   ひ



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!! 俺は放たれた光線ごとカノンをぶん殴った。



 「だから、効かねェんだよ! わからず屋がッ……!」


 ……わからない。


 殴ったからって


 怒鳴ったりしたからって


 カノンが正気を取り戻すとは限らなかった。

 それでも他に方法が思い付かないから貫き通すしかなかった。


 「目を覚ましやがれ! カノン=スカーレットッ!」


 ……正直、カノンの拳は痛かった。


 ……光線を弾くのだって楽じゃなかった。


 「俺は空上タツタだ! ちゃんと、前を見ろ! お前の目の前にいる男は空上タツタだ!」


 だけど、カノンを見捨てるなんて選択肢はなかった。

 今は敵なのかもしれないが、俺にとっては欠け代えのない親友であった。


 「目を覚ませ! お前はカノン=スカーレットだ! カノン=スカーレットはこんなに弱い人間なんかじゃねェだろ!」


 ……それに、俺にはお前が泣いているようにしか見えなかった。


 「いつまでも泣いてねェで顔を上げてこっちを見てくれよ!」


 ……膝を抱えて苦しんでいるようにしか見えなかった。


 「胸くれェ貸してやる! 泣き言だって聞いてやる! だから、いつまでも一人で抱えんなよ!」



 ――カノンが飛び掛かる。



 ――俺は真正面から突っ込んだ。



 「 仲間だろッッッ……! 」



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 俺の額とカノンの額が勢いよく衝突した。



 「……」

 『……』


 額を合わせたまま、俺とカノンは無言で静止していた。


 「……苦しかったよな……辛かったよな」


 ……カノンはずっと闇の中にいたのだ。


 「この前は突き放してごめんな、淋しかったよな」


 そんなカノンの肩に俺は手をやった……その肩は微かに震えていた。


 「カノン、目を覚ましてくれ、カノンッ……!」


 カノンはもう暴れなかった。戦意や殺意も希薄になっているのがわかった。


 『――くん』



 ――ぽつっ……。



 『 タツタ、くん 」



 ……カノンの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。


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