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 第347話 『 希望の光 』



 ――ギルド=ペトロギヌスは天才だ。



 ……それが彼女への評価である。


 魔術を扱うことに関しては私の知る限り随一であり、魔術以外においても戦闘センスがずば抜けていた。

 動体視力・反射神経・瞬発力等、魔術を関係のない能力も剣士であるタツタくんと同等のものを有していた。


 (……昔、カノンくんが言っていましたね)



 ――T.タツタの要はギルド=ペトロギヌスだ



 ……それは私も同感であった。

 純粋な戦闘力であればタツタくん、殺人であればユウくんのが優れているであろう。

 しかし、ギルドさんは二人には劣るものの高い戦闘力を有し、二人には無い一瞬で重傷を完治できるレベルの治癒魔法が扱えた。

 加えて、ギルドさんは二人よりも現実主義者リアリストで、感情を押し殺して冷静に戦うことができた。


 近・中・遠に対応した高い戦闘力。


 最高レベルの治癒魔法。


 ちょっとやそっとや揺るがない胆力。


 ……チーム戦において最も敵に回したくないのは、やはりギルドさんの他にいなかった。


 「頼みましたよ、ギルドさん」



 ……私は少し離れた場所から、ギルドさんと怪物の戦いを見守った。







 「久し振りだね、カノンくん」


 ……わたしは久し振りに顔を合わせた仲間に挨拶をした。


 『 あー、イタイタイタイ、駄目だよォ、油断するなってェ言ったじゃないィ、あー、ぁー 』


 「……」


 ……なるほど、会話にならないようであった。


 「了解、じゃあまず手足もいで、身動きできなくしてから話そうか」



 ――怪物が目と鼻先まで迫っていた。



 『 やっ てェ みろ 』

 「うん、いいよ♪」


 ――ガッッッッッ……! 怪物の爪先に太陽の杖が引っ掛けられていた。


 『 うぇ ? 回っ 』


 ――グルンッ……! 勢い余って怪物が転倒した。


 「あらあら、足元にはお気をつけくださ――……」


 ――トンッ……。転倒した怪物の腹に太陽の杖が当てられた。


 「 い♪ 」



  零  距  離  爆  破



 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 杖の先が爆発し、怪物は堪らず吹っ飛ばされた。


 怪物が地面を転がる。

 わたしは追撃するべく追い掛けた。


 『 来るなァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッ……! 』



 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッ……! 怪物の口から特大の炎弾が放たれた。



 「――♪」


 ――わたしは軽いステップで炎弾をかわした。


 「……〝業火水旋弾〟、懐かしい技だね」


 ……わたしは真後ろに光の盾を展開した。



 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッ……! 旋回してきた炎弾と光の盾が衝突し、相殺された。



 「旋回する炎弾、だっけ?」

 『ガァッッッッッッッッッッッッッッ……!』



 ――閃ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 間髪容れずに怪物が特大の光線を放つ。



 「――〝終焉の光〟♪」



 ――閃ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! わたしもほぼ同じタイミングで特大の光線を放った。



 『ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ……!』

 「――♪」




 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!! 二つの巨大な光線が衝突した。




 衝突と同時に衝撃波が走る。


 地面が割け、空気が軋んだ。


 そして――……。



 ――相殺



 ……二つの巨大な光線は霧散した。


 『 ? れ あ 』


 怪物が首を傾げた。

 恐らく、目の前にわたしがいなくなっていることに首を傾げたのであろう。

 まあ、ただ一つ言えることは――……。


 「 あなたは遅すぎる 」


 ――トンッ……。わたしは既に怪物の背後に立っていた。


 怪物が振り向く。


 『 斬レ


     てる? 』


 ……怪物は既に一刀両断されていた。


 「気づかなかった?」


 ――〝光縛刃〟×5


 「わざと同じ出力に調整して〝終焉の光〟を撃ったこと」


 ――ドドドドドッッッッッッ……! 光の刃が怪物を囲うように、等間隔に地面に刺さった。


 「相殺を見越して、既にあなたの下へ走り出していたこと」



   ペン        ゴン



 「あなたは既にわたしの掌の上で転がされていたこと」



 ――怪物が光の結界に閉じ込められた。



 「決まったね、カノンくん」


 『 グルアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ……! 』


 怪物が再生し、獣のように吼えた。

 封印魔法は得意ではないが、〝五光陣〟はわたしの持つ唯一の封印魔法だ。


 (……これで封印できなければ……最悪な対応をせざるを得ないね)


 ――最悪な対応


 ……それは、カノン=スカーレットの抹殺だ。


 (お願い、どうかこのまま閉じ込められたままでいて!)


 結界の中で暴れるカノンくんにわたしは祈った。



 ――ピシッ……。



 ……しかし、現実はそう甘くはなかった。


 『 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア 』



 ――パリイィィィィィィンンッッッッッッ……! 〝五光陣〟が粉々に砕け散った。



 「……………………嫌だなぁ」


 ……わたしは心の底からそう思った。


 カノンくんとはタツタさんとフレイちゃんの次に付き合いの長いメンバーであった。

 思い出だって沢山あった。そこには深い絆が確かにあったのだ。


 「……だけど」



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! わたしは杖に魔力を練り上げた。



 「さよならだね、カノンくん」


 ――殺す。


 嫌だけど、したくなんてないけど、わたしはカノンくんを殺す。

 きっと、タツタさんは甘いから、殺しきれないから、そういう汚れ役はわたしの仕事であった。


 『あー、あー、喰って、斬って、あああああっ、内臓をグチャグチャにしちゃうんだねェ、えっ』


 「行くよ」


 ――ドッッッッッッッッッッッ……! わたしと怪物は同時に飛び出した。





 「 その喧嘩、俺も交ぜろよ 」





 ――斬ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! わたしと怪物の間に黒い斬撃が突き抜けた。


 「――ッ!」


 ……戦いに集中していて忘れていた。


 そう、わたしと同じ頃にこの場所に一人の青年が向かっていたことを失念していたのだ。


 「……大遅刻ですよ」


 朝日が暗い森に射し込む。


 その朝日を背に、一人の青年がわたしの前に姿を見せた。



 「 タツタさん……! 」



 ……そう、空上タツタが、希望の光が絶望の闇に射し込んできたのであった。


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