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「真奈美」
そう呼ばれたと同時に後ろから何かに包まれた。
そして周りからきゃー!なんていう歓声が聞こえたりもした。
「……なんの冗談かな樹くん」
「樹、くん?なにそれ?誰のこと」
そういいながら腕の力を強める樹くん。痛い痛いやめろ離せ。
「とりあえず、離してくれるかな?」
「なんで?」
「なんでも」
「いやだ」
だめだこの人完璧に酔っ払ってらっしゃる。
ねぇ誰か助けてー。
「樹、離してやれって」
そう天使の声をかけてくれたのはそうです森川くん!さすが森川くん!
森川くんの言うことは聞こうか樹くん!
「……、なんで」
「場所考えろって。相川さん困ってる」
そうそう!私困ってる!場所関係なく困ってる!
ついでにこの周りの人の好奇の目にも困ってる!マジで離して!
「いやだ。なんで自分の彼女に抱きついちゃいけないわけ?」
そういいながらまたぎゅ、と腕の力を強めた。こいつ私を殺す気か?
と思っていたら。
「………えーーーー!!!!!」
「はぁ!?」
「え、ちょ、まじで!?」
「え!?真奈美!?え!?かのじょ……え!?つきあってんの!?」
クラスの皆様の大声に私の鼓膜は死にそうです。
「離して」
「やだ」
「やだじゃない」
「いーやーだー」
「樹」
「、」
しまった、普通にいつもどおりに呼んでしまった。
なんて気づいたのが遅かった。
「やっと呼んでくれた、」
「……っ!」
あれ、なんで樹の顔が目の前にあるの?と思ったのと
周りの大声がさらに騒がしくなったのは同時だった。
「……っなにしてんの樹!あほかお前!」
「だって今日ずーっと真奈美そばにいるのに抱きつけないしちゅーできないしっていうかむしろ
会話すらできないし。挙句の果てに彼女いますかとか聞かれるし。
なんで自分の彼女に彼女いますかとか聞かれなきゃいけないんだよー」
うるせー!そんなのみんなに言ってよ!
その叫びはまた樹に唇をふさがれたので声になることはなかったけど。
「樹…だから場所考えろって。また相川さんに怒られるぞ」
「酔っ払ってるからしょーがないー」
唯一私たちの関係を知ってた森川くんは、私に同情の目線を送ってくれた。ありがとう。
「ってなわけで。真奈美は俺の可愛い彼女なのでよろしくー」
そういってまたふにゃっと樹は笑って。
そして、
「そんじゃー俺たちは抜けるので!今日は楽しかったありがとー!」
私の手をとるとそのまま引っ張っていった。
「ちょ!いつき!なに!」
「んーこのまま俺の家にかえろー」
「なんで!明日学校なんだけど!」
「無理させないからー」
ふにゃふにゃ笑う樹にまぁ反対できるわけもなく。
だって私、この笑顔に弱いんだもん。
「ほんとに真奈美俺のこと大好きだねー」
「どこみてそういえるのかわからない」
「俺が真奈美のこと言ってるときちょーうれしかったでしょー」
……図星ですよ。悪いかこら。
「女の子たちに囲まれててちょっと悲しくなっちゃってだからみんなの輪から外れたんでしょー」
……よく見てらっしゃることで。
「ま、そんなの俺がわかってればいいんだけどねー」
わたしも、ほんとはそのふにゃふにゃした笑顔ほかの人に見せたくなかったけど。
「……樹がわたしのこと大好きなのもわかったからいいよ」
「っ!」
急に素直になるとものすごく照れる樹を知ってるのは
私だけなので、まぁおあいこかな。
翌日の1限には間に合わなかったし
みんなからものすごい数のラインが来てたりもしたけど
幸せだったのでよしとしよう。うん。
ちょっとした小話でした。
読んでくださりありがとうございました!