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月と夜のふとん
いつも全力疾走だった。
それでよかった。楽しかった。
それでも急に走れなくなって、止まったわたしはこのまま夜に飲み込まれるのかと思った。
カーテンに包まって一人寂しく啜り泣いてやろう。
そうして手を伸ばしたら、その後ろには夜があって、丸い月が浮かんでいた。
なんて綺麗なんだろう。
まるで初めて見たみたいに、わたしは駆られて外へ出た。
ただそこに浮かぶ月は、街灯よりも優しい色で世界をほんの一段明るくしている。
月は淡い強さで、わたしの手を握った気がした。
「おつきさま……」
返事をすることはないのだけれど、その光は夢の中のように綺麗で、わたしはつい涙が滲んだ。
もう少し、ここにいたい。
今は強い光じゃなくて、やわい光に抱かれていたい。夜の中で休みたい。
そしたら、元気になったら、またわたしは歩き出すから。




