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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第7話:ザイロスとの再会

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第61章:セラとリリアの話

 レイと別れ、城の回廊を歩いていたセラは、隣に並ぶリリアの横顔をちらりと見た。

 煌びやかなシャンデリアの光に照らされた少女は、どこか言葉を探しているように視線を揺らし、やがて勇気を振り絞ったように口を開いた。


「……あの、セラさん。ひとつ、お聞きしてもいいですか?」


 声は小さく、それでいて真剣さを帯びていた。

 セラは足を止め、微笑を浮かべながら頷く。

「もちろん。なんでも聞いてください」


 リリアは胸元で手を組み、瞳を伏せる。

「レイ様には……その……どなたか、お慕いしている方はいらっしゃるのでしょうか?」


 やはり、という思いがセラの胸をよぎる。

 けれど予想していた質問を受け、返す言葉は容易ではなかった。

 しばし沈黙したのち、彼女はゆっくりと答えた。


「残念ながら……いいえ。彼女はいません」


「そう……ですか」

 リリアの声はかすかに弾んだ。その瞬間、胸の奥に広がった安堵が隠しきれず、頬に赤みが差す。


 だが、セラは続けた。

「けれど……結婚した人はいます」


 その一言に、リリアは驚きのあまり足を止めた。

「けっ……結婚、ですか? だ、誰と……?」


 その視線を真正面から受け止め、セラは静かに微笑む。

「わたしです。わたしと、レイは夫婦なんです」


 リリアの唇が小さく震えた。

 信じられないという表情のまま、言葉を失う。

 しばらくの沈黙ののち、ようやく絞り出した声は掠れていた。


「……そう、なんですね」


 肩を落としたその姿は、どこか儚く、セラの胸に複雑な痛みを残した。

 自分は間違ったことをしていない。けれど、少女の瞳に宿った影を見れば、どうしても胸が締めつけられる。


 やがてリリアは顔を上げ、震える声で問うた。

「わたし……見ているだけでいいでしょうか? せめて、遠くからでも……」


 セラは少しだけ目を伏せ、それから柔らかく答えた。

「……ええ。大丈夫です」


 それ以上は言わなかった。言えば言うほど、リリアの想いを縛ってしまう気がしたからだ。

 それでも、許すというより受け入れるように頷くセラの姿に、リリアは小さく安堵の笑みを浮かべた。


 こうして二人の会話は終わり、再び廊下を歩き始める。

 そして広間に戻れば、そこには城下町を探索し終えたレイの姿があった。


「おかえり、セラ」

 彼はどこか楽しそうに微笑む。

「街を歩いてきたが……いや、本当にいい所だった。露店で果物を食べたんだが、実に旨かったぞ」


 その素直な喜びように、セラもまたほっとしたように微笑んだ。

 リリアは一歩引いた位置に立ちながらも、二人を見つめ続けていた。


 そして夕刻。

 国王からの招待を受け、レイとセラは豪奢な食堂に足を踏み入れた。

 長いテーブルの上には、豪華な料理がずらりと並べられている。焼き上げられた肉、香草をまぶした魚、色とりどりの果実を使った菓子。香りだけで食欲が刺激されるほどだった。


 席につくと、王妃やリリアも揃い、和やかな雰囲気の中で食事が始まった。

 レイはさすがに緊張しながらも、出された料理に舌鼓を打つ。セラもまた、王国の味を楽しむように小さく笑みを浮かべていた。


 その最中だった。

 国王が杯を置き、ふと何気ない調子で言った。


「……レイよ。我が娘を娶ってはくれぬか?」


 その瞬間、レイの口に含んでいた水が勢いよく吹き出し、向かいの皿に飛び散った。

「ぶっ……!? げほっ、げほっ!」


 セラは思わず立ち上がり、布巾で彼の口元を拭く。

 リリアは一瞬で真っ赤になり、王妃は慌てて夫の袖を引いた。


「あなた、急に何を……!」

「ふむ、良い考えだと思ったのだがな」


 王は悪びれもせず顎髭を撫でる。


 レイは咳き込みながら立ち上がり、必死に言葉を探した。

「こ、国王陛下!? いや、あの……私には、すでに――」


 言いかけたその時だった。

 空気が一変した。


 冷たい風が食堂を駆け抜け、燭台の炎が一斉に揺れる。

 レイの背筋に悪寒が走った。


「……来たか」

 鋭い眼差しで扉の方を睨みつける。

「さすがに、動き出したか。ザイロス」


 その名を告げた瞬間、空気はさらに重くなり、食堂の全員が息を呑んだ。

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