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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第6話:平和な日常を求めて

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第55章:ただいまエルフの森

 実家での三日間を満喫したレイとセラは、次の目的地に向けて出発することにした。両親には「学園の寮に戻る」とだけ伝えてある。長い旅をしていることは秘密にしたままにした。これ以上心配をかける必要はないとレイは考えていたからだ。


 そして次の目的地は――セラの故郷、エルフの森だった。


 深い森に入ると、木々が静かにざわめき、結界の中に一歩足を踏み入れた瞬間、温かい空気が二人を包み込んだ。澄んだ風が頬を撫で、鳥のさえずりが耳をくすぐる。木の枝に組み上げられた家々が見えたとき、セラの表情がふっと和らいだ。


「帰ってきました……」


 小さく呟く彼女の声には懐かしさと誇らしさが混ざっていた。


 その瞬間、村人たちが一斉に駆け寄ってきた。


「セラ様! お帰りなさいませ!」

「まあ、レイ様もご一緒に! 本当にようこそ!」


 老若男女が次々に声をかけ、手に手に籠を抱えていた。中には真っ赤に熟れた果実や、香ばしく焼き上げられたパン、鮮やかな花束などがぎっしり詰め込まれている。差し出された品々にレイは両手がふさがり、思わず苦笑した。


「ちょっと、こんなに……」

「ふふっ、エルフの村では当然のことなんです。レイは私の夫ですから」


 セラは誇らしげに笑い、胸を張る。その仕草にレイは頬をかきながら、ただ「ありがとう」と返すしかなかった。


 やがて長老の館へと案内される。


 広間の奥に座していたのは、銀髪を後ろで束ねた長老だった。深い皺に刻まれた笑みが、彼の人柄を物語っている。


「おお、セラ。よくぞ戻った。そして……」

 視線がレイへと向けられる。

「そなたが、我らが娘の選んだ伴侶か」


 レイは少し緊張しながらも深く頭を下げた。

「レイ・ノヴァリアと申します。しばしの間、お世話になります」


 長老は目を細め、ゆっくりと頷いた。

「三日間、ここでゆっくりしていかれるがよい。娘の夫が安らげるのならば、それが我らにとっての誇りじゃ」


 その言葉には確かな温もりがあった。レイは胸の奥がじんと熱くなり、心から礼を述べた。


 ◇


 エルフの村での生活は穏やかで、どこか時間がゆっくりと流れているように感じられた。


 昼間はセラと連れ立って村の中を散歩する。道を歩けば、子どもたちが「セラ姉さま!」と駆け寄り、嬉しそうに抱きついてくる。その光景に、レイも自然と微笑んだ。


「セラって、やっぱり人気者なんだな」

「えっ……そ、そんなことないですよ。ただ……小さいころからずっと、みんなと一緒に過ごしてきただけです」


 少し恥ずかしそうに答えるセラの横顔が夕陽に照らされ、レイの心を掴んで離さなかった。


 散歩の途中、村人からは次々と差し入れが渡される。甘い果実酒や、珍しい木の実、香草で作られた薬湯。中には「ご夫婦でどうぞ」と茶目っ気たっぷりに渡されるものもあり、セラは耳まで赤く染めながら受け取っていた。


「……なんだか、レイの方が村に馴染んでませんか?」

「いや、完全にセラのおかげだよ。君の夫だから親切にしてもらえてるんだ」

「それでも……私は嬉しいです」


 その一言に、レイは思わず立ち止まり、彼女を見つめた。セラは恥ずかしそうに俯いていたが、確かに頬には柔らかな笑みが浮かんでいた。


 ◇


 夕方、二人は与えられた部屋に戻った。窓から差し込む夕暮れの光が、木造りの室内を黄金色に染めている。


 ふと、扉がノックされた。


「……入ってもいいですか?」


 セラの声だった。


 レイが返事をすると、そっと扉が開き、セラが中に入ってくる。彼女は少し緊張した面持ちで、しかし真っ直ぐにレイを見つめていた。


「今夜は……一緒に過ごしてもいいですか?」


 その言葉に、レイの胸が高鳴った。長い旅の中で共に過ごしてきたが、こうして改めて伝えられると、胸の奥がじんと温かくなる。


「ああ……もちろんだ」


 短い返事だったが、そこに込めた想いは大きい。セラは安堵の表情を浮かべ、レイの隣に腰を下ろした。二人はしばらく言葉もなく、外に広がる星空を眺めていた。


 ◇


 二日目。


 レイは村の子どもたちに魔法の基本を教えていた。炎を灯す程度の初歩的なものだったが、子どもたちは目を輝かせて喜んでいた。セラはその横で、懐かしい仲間たちと談笑している。


 長老もやって来て、静かに頷いた。

「……やはり、ただの旅人ではないな。そなたの力があれば、この森も安泰だろう」


 レイは少し戸惑いながらも微笑んだ。

「俺はただ、セラと一緒に歩んでいるだけです」


 ◇


 三日目の夜。


 レイとセラは森の中央にある大樹の下に座っていた。村人たちが集い、宴のような雰囲気が広がっている。歌声と笛の音が響き渡り、笑顔があふれていた。


 その輪の中で、セラは楽しそうに踊り、レイはそれを見守っていた。やがて彼女が戻ってきて、少し息を弾ませながら囁く。


「レイも一緒に踊りませんか?」

「俺は不器用だからな……」

「そんなことありません。隣にいてくれるだけで十分です」


 差し出された手を握り、レイは立ち上がった。夜風に吹かれながら、二人は輪の中で共に踊る。ぎこちなくても、互いに笑い合い、その時間は何よりも愛おしいものとなった。


 ◇


 そして三日後――。


 村を後にする日が来た。長老と村人たちが見送る中、レイとセラは並んで歩き出す。


「次はドワーフ王国ですね」

「ああ。休むだけじゃなく、冒険者として上を目指さないとな」


 それでも、エルフの村で過ごした三日間の穏やかさは、二人にとってかけがえのない宝物となった。


 こうして二人は、新たな地へと歩みを進めるのだった。

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