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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第6話:平和な日常を求めて

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第52章:レイの脱出作戦

ノヴァリア学園に平和が戻ってから、しばらくの日々が過ぎた。

ザイロスの影は確かに残っているものの、目に見える動きはない。

だからこそ、束の間の安堵を得られる時間が訪れていた。


レイ=ノヴァリアは、そんな学園生活の一角で、一人悩んでいた。


「……そういえば、俺……セラと結婚してから、まともに何もしてねぇな。」


彼女にプロポーズをした時のことは鮮明に覚えている。勇気を振り絞り、指輪を渡した。

セラは泣き笑いのような顔でそれを受け取り、幸せそうに抱きついてきた。

あの瞬間は、これまでの人生の中でも指折りに数えられる幸福だった。


――だが、それから。


魔王との戦い、ザイロスの策謀、学園に戻ってからも次々と事件が舞い込んだ。

気づけば、指輪以外に何も渡せていない。

本当なら、花束でも、記念の小物でも、セラが喜ぶものを一つは用意すべきだった。


「旅が続きすぎたってのもあるけど……これは夫として、ダメだよな。」


胸の奥にわずかな罪悪感が芽生える。

セラは何も言わない。むしろ、いつも通り優しく微笑み、隣に寄り添ってくれる。

だが、その沈黙がかえってレイを追い詰めた。


(……よし。プレゼントを買いに行くか。だが、問題は――)


最近のセラは、とにかく距離が近い。

授業の時も、食堂での食事の時も、そして放課後も。

まるで「一人にしたら危ない」とでも思っているかのように、常にレイの隣にいる。


もちろん、それは愛情の裏返しなのだろう。

けれど、それでは一人で出かける余地がない。


「……セラに見つかったら終わりだ。いや、それどころかミナに見つかってもアウトだな。」


ミナは妙に勘が鋭い。レイが少しでも怪しい動きをすれば、すぐに問い詰めてくる。

「レイ、何か隠してない?」とでも言いながら、詮索してくるに違いない。


学園のみんなは二人が結婚していることを知らない。

それだけに、セラやミナにバレれば「なぜ一人で出かける必要があるのか」と問い詰められる。

結果、サプライズが台無しになるのは目に見えていた。


「くそっ、どうする……」


レイは部屋の机に頬杖をつきながら唸った。

だが、ふと視線を横にやったとき、棚の上に置かれた一体の人形が目に入る。


小柄な、布製の人形。

しかし、ただの人形ではない。


レイが旅の合間にコツコツと開発してきた、自作の魔導具――【変身人形】。

魔力を込めることで、その人間の姿を映し、動きを模倣する。

簡単な会話や仕草も再現できるよう、細かく魔法式を組み込んである。


「……ついに、この人形の出番ってわけか。」


にやりと笑うレイ。

セラやミナがそばにいても、人形を自分の姿に変え、ベッドに座らせておけば、少なくとも違和感は生まれない。

自分はこっそりと抜け出し、街へと向かう。


「……これでようやく、セラにプレゼントを渡せるな。」


その夜。


セラとミナが用事で部屋を出ている隙に、レイは人形を取り出した。

魔力を込めると、布地が淡く光を放ち、じわじわと人間の輪郭を形成していく。


「おお……!」


数秒後には、そこにもう一人のレイが座っていた。

表情はやや無表情気味だが、ぱっと見では本人と見分けがつかない。


「うーん……ちょっと硬いな。笑え。……いや、笑いすぎるな。自然に。」


人形はぎこちなく口角を上げる。

レイは思わず吹き出しそうになった。


「まあ……セラとミナが入ってきても、すぐには気づかれないだろ。」


そうして準備を整えたレイは、窓から外へと抜け出した。

久しぶりに一人きりで歩く学園の中庭。夜風が心地よい。


「よし……街へ行くか。」


一方その頃。


「……あれ、レイは?」

セラが首を傾げながら部屋に戻ってきた。


そこには、ベッドに腰掛けているレイの姿があった。

「……ああ、なんでもない。ただ、ちょっと考え事してただけだ。」


人形が、事前に込められたレイの声でそう呟いた。


「……そう?」

セラは不思議そうにしながらも、そのまま微笑んで隣に座る。

ミナも入ってきて、机に腰掛けながら様子をうかがった。


「……何か変じゃないですか? 今日のレイ。」

「え? そう?」


セラは笑っているが、ミナの勘はやはり鋭かった。

人形の仕草のぎこちなさに、わずかな違和感を感じ取っている。


「まさか……」


ミナが目を細めた瞬間――。


街に出たレイは、にやりと笑っていた。

「ふふん……人形のおかげで完璧にごまかせたな。」


そう信じていた。

だがその背後から――。


「……レイ?」


低い声が響き、背筋に冷たい汗が流れた。


振り返れば、そこにはやはりミナが立っていた。

腕を組み、じっと睨むような目で。


「……どこへ行くおつもりですか?」


レイは固まった。

――果たして、このサプライズ作戦は無事成功するのだろうか。

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