第47章:レイVS魔王??
レイは、石段を駆け上がる音すら掻き消すほどの勢いで、魔王城の屋上へと急いでいた。
背後でセラやミナが必死に戦っていることは分かっている。だからこそ、ここで魔王の復活を止めなければ――仲間の努力も無駄になってしまう。
「間に合え……!」
屋上にたどり着いた時、そこには巨大な魔法陣が完成しようとしていた。
黒い炎が渦を巻き、血のように赤い光が空を裂く。中心にはザイロスが立ち、両手を天に掲げて呪文を詠唱している。
「ははは! ついにこの時が来た! 我らが主、偉大なる魔王よ――今ここに復活を!」
その声に呼応するかのように魔法陣が輝きを増していく。
だがレイは諦めなかった。
「間に合わなくても……やるしかない!」
レイは即興で術式を組み、魔法陣に魔力を上乗せする。
ただ止めるには時間が足りない。ならばせめて――弱体化、封印の補助、あるいは……。
「――《リサイズ》!」
焦る心のまま放ったのは、本来なら物体や存在を縮小する魔法。
レイは呪文の干渉を狙って放ち、魔法陣に自分の魔力を重ねる。
その瞬間、光と闇が弾けた。
轟音とともに屋上全体が揺れる。
空が裂け、異界からの力が流れ込む。
魔王の復活――そして……。
魔法陣の中央に、ゆっくりと影が現れた。
禍々しいオーラを纏い、古の力を感じさせるその存在。
「……我は、魔王ヴァルゼリオ……」
低く響く声。
しかし現れた姿は――小さな子供だった。
身長はレイの腰ほど。
小さな手足、まだ幼い顔立ち。
だがその瞳だけは深淵のように赤く輝き、圧倒的な存在感を放っていた。
「なっ……!?」
レイは目を疑った。
「……え?」
追いついたセラも呆気に取られ、ミナは口をぱくぱくさせていた。
ザイロスでさえ動揺を隠せない。
「ば、馬鹿な……魔王様の復活が……なぜ、このような……!」
小さな魔王は自らの体を見下ろし、拳を握ったり開いたりしていた。
「……ふむ。どういうことだ? 力は確かに戻ってきた……だが、この姿は……」
子供の体に収まった魔王は、名を名乗ろうとした瞬間、視線がレイに向いた。
「……お前か。貴様が我の復活に干渉したな?」
圧迫感のある声が響き、レイは背筋を強張らせる。
「そ、それは……」
「答えよ。なぜこのような姿に……!」
レイは観念したように口を開いた。
「……悪い。俺も予想外だった。入れた魔法は、対象を小さくするものだ。間に合わなかったから、とっさに……」
その言葉にセラもミナも「えぇ……」と顔を引きつらせる。
ザイロスに至っては両手で頭を抱え、震えていた。
「な……何をしているんだお前は……!」
小さな魔王――ヴァルゼリオは、しばし沈黙した。
やがて、その口元が吊り上がる。
「クク……クハハハッ!」
「笑ってる!?」とセラが驚く。
「面白い。まさか人間風情が我の復活に干渉し、このような形にするとはな。だが勘違いするな」
ヴァルゼリオは小さな体からは想像もできないほどの魔力を放った。
空気が震え、屋上全体が圧迫される。
「姿が幼くとも、我は魔王だ。その事実は揺るがぬ!」
セラとミナは絶望の色を浮かべた。
「ちっちゃいのに……この魔力……!」
レイは剣を抜き、魔王に向き合った。
「なら――やることは一つだな」
ヴァルゼリオは小さな足で一歩前に出た。
「ほう。恐れぬか。面白い人間だ。名を名乗れ」
「レイ。冒険者だ」
「レイか……覚えておこう。貴様は我を小さくした愚か者……そして、楽しみを与える存在だ」
緊張が走る。
セラは魔力を構え、ミナも剣を構える。
ザイロスは後方で狂ったように叫んでいた。
「魔王様! 今はその者を……!」
だがヴァルゼリオは手を上げて制した。
「黙れ、ザイロス。これは我とこの人間との戦いだ」
子供の姿の魔王と、レイ。
両者が向き合い――屋上に嵐のような魔力が吹き荒れた。




