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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第5話:魔王城に突撃

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第44章:魔王城に突入

魔王城の影は、空を覆うように重く広がっていた。

黒い雲が渦巻き、稲妻が塔の先端を照らすたび、城全体が生き物のようにうねる。

その威圧感を前にしても、レイの歩みは止まらなかった。


「リィナ、ここから先はついてこなくていい」

正門の前に立つと、レイは仲間の少女に振り返った。


リィナは小さく肩を震わせ、唇を噛む。

「……でも、わたしも一緒に……」

「お前は優しい。でも、優しさだけじゃ守れない場所なんだ、ここは」

レイは静かに言葉を落とした。

「無理に戦えとは言わない。だから、ここで待っていてくれ」


セラも隣から声をかける。

「リィナ、レイの言う通り。ここでの戦いは、わたしたちに任せて」


しばらく逡巡した後、リィナは俯いたまま小さく頷いた。

「……わかった。みんな、無事で戻ってきてね」


その願いを背に受け、レイたちは正門の重圧を踏み越えた。

次の瞬間――。


「……来たか」


空気が裂けるような魔力が上から降り注いだ。

その圧力に思わず足を止める。あの時と同じ、いやそれ以上に濃い。

――かつて、魔王の手下が現れた時に感じたものと同じ感覚。


轟音と共に地面が揺れる。

そこに現れたのは、漆黒の鎧に身を包んだ巨躯。

全身から殺気を放ち、その目は獣のように爛々と光る。


「ガルドゥス……!」

レイは低く呟いた。


「やはり来たか、レイ」

その声は地を揺らすほどの重さを持っていた。

「お前と拳を交える日を、この時を、俺はずっと待ちわびていた」


「……奇遇だな。俺もだ」

一瞬、口元に笑みを浮かべかける。だがすぐに表情を引き締めた。

「だが――今は時間がない」


「時間がない、だと?」

ガルドゥスの赤い瞳が細められる。

「言い訳は聞きたくない。ここで決着をつけるぞ!」


大地を叩き割るような一歩。巨拳が振り上げられた瞬間――。


「待って」

レイの隣にいた少女が、鋭く声を上げた。


ミナだ。

「ガルドゥスは、わたしが相手する。レイは先に行って」


レイは彼女を見つめる。

「……できるか?」

「当然。あなたの背中は、わたしが守る」

ミナは短剣を抜き、煌めく刃を正面に構えた。


ガルドゥスは低く笑う。

「女ごときが、この俺の相手をするだと……?」

「試してみる?」

挑発的な笑みと共に、ミナは一歩踏み出した。


レイは短く息を吸い、振り返らずに奥へ駆け出した。

「頼んだぞ、ミナ!」


剣戟の音が背後に響く。

その激しい衝突を背にしながら、レイは真っ直ぐに進んでいった。


――そしてたどり着いたのは、広大なホールだった。


高い天井。四方を覆う黒の装飾。そこかしこに灯る燭台の炎は、不気味な紫色をしている。

しかし最も気配を放っていたのは天井のさらに上、屋上から漏れ出す邪悪な魔力だった。


「……間違いない。あそこだ」

魔王復活の儀式。


一歩踏み出したその瞬間――。

「止まりなさい」


前方に、白髪を靡かせた女性が立ちはだかった。

切れ長の瞳、血のように赤い唇。艶やかな笑みを浮かべながらも、その背後に漂う気配は氷の刃のように冷たい。


「あなたを行かせるわけにはいかない」


「魔王の手下か……」

レイは剣を構える。しかし、その肩にそっと手が置かれた。


「ここは、わたしがやる」


セラだった。

彼女の瞳には決意が宿っていた。

「レイ、あなたは屋上へ。魔王を止めるのはあなたの役目だから」


「だが――」

「大丈夫。信じて」


一瞬の沈黙の後、レイは深く頷いた。

「……必ず追いつけ」

「ええ、約束する」


セラは杖を構え、女性と対峙する。

「あなたをここで足止めさせてもらうわ」


女性は妖艶に笑った。

「面白い。人間の小娘ごときが、わたしを相手に……」


両者の魔力がぶつかり合い、ホールの空気が震える。


レイは二人を一瞬だけ振り返り、そして駆け出した。

足音が階段に響く。

一段、一段、上へ――。


屋上からはなおも禍々しい気配が溢れ出している。

心臓が高鳴る。

ザイロスが、そこで待っている。

魔王が、復活しようとしている。


「……必ず、止める」


強く誓いを立て、レイは屋上への最後の扉を押し開けた――。

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