第223章:境界剣技
ゴォォォォォッ―――!!
黒い霧が吹き荒れる。
第零層全体が震える。
◆
最上位観測者。
その姿は定まらない。
人にも見える。
獣にも見える。
闇そのものにも見える。
◆
見ているだけで頭が痛くなる。
存在そのものが異常。
◆
だが。
今のレイは違った。
◆
未来の自分から受け継いだ記憶。
戦い方。
経験。
◆
そして。
守りたいもの。
◆
レイは静かに剣を構える。
蒼黒の光が刃を包む。
◆
「みんな」
レイが言う。
◆
「少しだけ時間をくれ」
◆
ミナが笑う。
「その台詞聞くの何回目だと思ってる」
◆
「今回は信じる」
セラも頷く。
◆
アイリスが小さく言う。
「……負けないで」
◆
レイは前を向く。
◆
観測者が動く。
空間が歪む。
黒い槍が無数に生まれる。
◆
数百。
いや数千。
◆
全方位攻撃。
◆
普通なら避けられない。
◆
だが。
レイは目を閉じた。
◆
未来の記憶。
未来の感覚。
◆
そして。
ゆっくり息を吸う。
◆
「――境界剣技」
◆
剣が光る。
◆
「第一式」
◆
「《蒼界閃》」
◆
ザァァァァァン!!
◆
一振り。
それだけだった。
◆
だが。
空間に巨大な蒼い線が走る。
◆
数千の槍。
全てが同時に消滅。
◆
ミナが目を見開く。
「嘘でしょ……」
◆
未来のレイが使っていた技。
その一つ。
◆
観測者が初めて反応する。
◆
ギギギギギ……
不気味な音。
◆
そして。
空間が裂けた。
◆
中から巨大な腕。
黒い怪物。
◆
第零層の壁が砕ける。
◆
「来る!」
カレンが叫ぶ。
◆
だがレイは動かない。
◆
静かに剣を握る。
◆
「第二式」
◆
蒼黒の光が広がる。
◆
「《境界断絶》」
◆
剣を振る。
◆
次の瞬間。
怪物の腕が空中で止まる。
◆
そして。
スパッ――
◆
綺麗に切断された。
◆
ガルドが絶句する。
「何だ今の……」
◆
だが。
観測者はまだ止まらない。
◆
むしろ。
さらに巨大な魔力が集まる。
◆
ドクン。
ドクン。
◆
第零層の中心。
扉の向こう。
◆
何かが目覚める。
◆
その瞬間。
未来の記憶が反応する。
◆
レイの顔色が変わる。
◆
「まずい……」
◆
ミナが振り向く。
「何?」
◆
レイは震える声で言った。
◆
「こいつ……」
◆
「本体じゃない」
◆
全員の背筋が凍る。
◆
観測者は。
ただの分身。
◆
そして。
扉の向こうには――
未来のレイですら封じきれなかった、
真の災厄が眠っていた。




