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4 今までのお返しをしました

 1時間後。

 指定された場所にやってきた。


「リリス。感謝する。どう見ても勝ち目のない勝負だ。それでも泥舟に乗ってくれて」

「気にしないでくれゼノン」


 そう言ってくれるリリスの言葉で重荷が取れる。


「クルルは恐らく何も出来ないと思う」

「は、はい。私は本当に何もできません。囮くらいしか」


 そう言ってくるクルル。

 となると戦えるのは俺とリリスだけだ。


 というより


「下手すれば4vs1だな。俺はノーコンで最悪リリスに向けて矢を放ってしまうからな」

「撃たないでくれよ?」


 そう笑っている彼女だがあれだけ酷評された俺の弓の腕。そうなっても不思議じゃない。


「とりあえず俺は後方で支援に回る。火力は期待しないでくれ」

「分かった」


 そう言ってくれるリリス。

 とりあえず俺は普段通りに動けるらしい。


「わ、私はどうすれば?」

「俺かリリスが怪我をすればポーションでも投げて欲しい」

「わ、分かりました!」


 このポーション係意外とバカにならない。

 特に前衛職が退くことを知らないタイプだと気付かない内にボロボロになっているからだ。

 そう。ガバルはそのタイプだから大変だった。


 とりあえずの作戦は立てられた。

 後は実戦でどうにかするしかないな。


 俺は開始位置に立つ。


「ビビらずに来たみたいだな」


 笑うガバル。

 それからディッチが続く。


「私も尻尾巻いて逃げるのかと思ってたー」

「俺もだ」


 ガランがそう言って3人で笑った後にガバルが口を開く。


「いいか?ゼノン。お前の居場所なんてどこにも無いんだよ。国外に出れば迎えてくれる場所がある?そんなことないんだよ。だってお前はこの試合で負けて更に恥を晒すだけだからな」


 奴がそう言った暫くあと試合が始まった。


「せい!」


 リリスが前に出てくれる。

 俺はそれを援護する形で矢を放つ。


 ビュン!ビュン!


 何発もそうして放つ。


「だから当たんねぇんだよ!ノーコン!」


 ガバルが叫んでいる。


「そうよ!ノーコンのゼノン!貴方の矢なんて勝手に私達を避けるんだから!当たるわけないわよー!」


 ディッチもそう言い


「寝てても避けられるぜ。当たらねぇんだからな」


 ガランもそんなことを口にしている。

 その言葉の数々に挫けそうになるけど。でも今のところ俺の中では上手く放てているつもりだ。


 だってガバル達3人が1箇所に集まっており、俺の思い描いた戦況になっていたから。これならいけそうだと感じた俺は自分の中にあった作戦を遂行することにした。

 リリスを活躍させるのではなく俺が決める。

 

 アイテムポーチから爆炎瓶を取り出すと瓶の中身を矢に振りかけそして飛び上がるとそのまま射出。

 この瓶の中身を振りかければ着弾したときに爆発を起こせるのだ。


 狙うは3人の中央。


 ドーーーーーーン!!!!!!!


「きゃーーーー!!!!!」

「ぐぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 その爆発に巻き込まれて吹き飛ぶ3人。

 まとめて場外に叩き出された。


 ディッチとガランは既に気絶していて


「な、何が起きやがった……」


 そう呟いているガバルに近付くと弓を構えた。


「チェックメイト、かな」


 ニヤリと笑って告げる。

 上手くいったようだ。


「な、何だよこれ」


 ワナワナと震えて後ずさるガバル。

 その後にようやく聞こえるジャッジの声。


「し、試合終了!勝者ゼノンパーティ!」


 審判の声と同時に歓声が上がる。


「す、すげぇ!!!!!EランクパーティがSランクパーティに勝ったぞ!!!!」

「な、何だよこれ凄すぎんだろ!!!!!」


 あちこちからそんな声が聞こえてくる中俺は告げた。


「俺の勝ちだ。初めはSランクを相手にするのは怖かったが凄く弱いな」

「な、なんだと!!!それにみ、認められるかよこんな試合!」


 俺の言葉に怒りを示すガバルだが笑って答える。


「お前が認めなくても審判は認めているみたいだが?」

「ぐっ!ゆ、油断してただけだ!」


 そう言えばクルルに手を出そうとしていたもんな。


「今までの分のお返しをさせてもらおうか」

「な、何をするつもりだ!!」


 呻いているガバルを弓で殴って気絶させる。

 もう興味を失せたのでクルル達の元に戻った。


「か、勝ちましたー!!!!!!流石はゼノン様なのです!」


 そう言って飛び跳ねて喜んでくれるクルル。


「勝ててよかったよ」


 そう言ってからリリスに目をやったが。


「ゼノン、少しいいか?」


 そう言われた俺はリリスについていくことにした。


 彼女は酒場の奥を指定して俺に話を振った来た。


「ノーコンと聞いていたが話が違うな」


 そう口にした彼女に対して首を傾げるクルル。


「ゼノン様の戦い方はボカーンって爆発させる事じゃないんですか?あれは凄かったです!ノーコンでも問題ないじゃないですか。むしろゼノン様のあのミスはハンデですよ!」


 すごい買ってくれているらしいがそういう訳じゃない。


「やはり普通の人の目にはそう見えるんだね。確かに最後の技のインパクトは強かったからそう見えても仕方ないとは思うけど」


 リリスはそう言ってから俺に目を向けた。


「あの矢の数々、全部───────わざと外してたよね」

「そうですよね。ハンデなんですからわざと外しませんと」


 クルルはそう言っているがハンデじゃない。


「ははは違うよクルル」


 それに対して笑って答えるリリス。

 そうしてから彼女は机の上にあった紙で紙飛行機を折るとスイーっとクルルに向けてゆっくりと飛ばした。

 当然クルルは避ける。


「それだよクルル」

「え?どういうことですか?リリス様」

「普通攻撃というものはどんな弱いものでも避けられるなら避けるよね。クルルのした紙飛行機を避けるというのも同じことなんだ。ゼノンはわざと避けさせた」


 どうやらリリスは俺がしていたことに気付いているらしい。

 流石Sランク冒険者というところか。


 Sランクであることは既に聞いている。


「え?わざと、ですか?」


 クルルが尚も分かっていないような顔をする。


「分からなくても無理はないよクルル。ゼノンはとんでもない天才だよ。ここまでの天才過去にも未来にもいないと思う。正直私も見惚れた」


 そう言ったリリスは俺に頭を下げた。


「ゼノン。正式に私をパーティに加えてはくれないだろうか?」

「り、リリス様が加入してくれるんですか?!」


 驚いているクルル。


「別に構わないよ」

「感謝する」


 そう言ったところでクルルは首を傾げた。


「避けさせたのは分かったのですが何故避けさせたのですか?」


 その質問に答えることにした。


「集合させるためだよ。瓶の数にも限りがあったから出来るだけ1発で決めたかった」

「な、なるほどです。な、ならゼノン様は試合開始から試合終了までの流れを初めに決めてその通りに戦況を動かしたのですか?!」

「まぁね」

「さ、流石ゼノン様です!やはり神様なのではないですか?!」


 そう聞いてくるクルルに苦笑いで返してから口を開いた。


「さて、俺達はこれから今度こそギルドに向かおうか」


 クルルの顔を見てそう言った。

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