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3 嫌なあいつと再会しました

 翌日。

 昨夜俺達は移動に疲れたので森の中で休んでいた。


 寝込みを襲われるかもしれないので交代で見張っていたが幸いそんなことはなかった。


「おはようございます〜」

「おはよう。起きて直ぐのところ悪いが移動するよ」


 そう言って昨日のうちに行くことに決めていた国への道を歩くことにした。


「何処へ行くのですか?」

「アグラという国へ向かう」


 アグラはここから少し行ったところにある国だ。

 昨夜聞いたクルルの故郷ではないし俺も余り行ったことのない国だ。

 

 ここなら俺たちを迎え入れてくれる可能性は十分にあると踏んだからだ。


「さぁ、向かおうか」


◇


「ここがアグラという国なんですねー」


 初めて来る国に目を輝かせているクルル。


「そうだね。とは言っても俺も来るのは初めてだけど」


 そう返してからクルルに目をやった。


「その服変えちゃおっか」

「い、いいのですか?」


 驚いたように聞いてくるクルル。

 彼女はボロボロで薄い布のようなものを1枚纏っているだけだ。


「そんな姿で何時までもいさせる訳にはいかないよ」


 そう答えて俺は普通の女の子が着ているような服をクルルに買ってあげた。


「に、似合っていますか?」

「うん。可愛いよ」

「そ、そんな可愛いだなんて」


 クルルは茹でられたように顔を赤くする。

 何故だろう?と思ったが口を開いた。


「とにかくギルドへ行きたいかな」


 そう口にしてとりあえずギルドに向かうことにした。


「クルルはギルドに登録は済ませてあるの?」

「ギルド登録ってなんですか?」

「話せば長くなるから細かいことは割愛するけど冒険者として活動するならギルドに登録した方がいいんだよ」

「へー。そんなのがあるんですね!ゼノン様は物知り博士です!でも、私前のパーティではそんなことしてませんよ?」


 どうせそんなことだろうと思っていた。

 ギルドに登録すると微々たるものだが料金が発生する。


 それをケチって登録しない冒険者がいるのだ。

 俺もそうだった。


 ガバルは俺の分の冒険者登録をしなかった。

 だからずっとEランク冒険者だった。


「という訳でお揃いだね。一緒に登録しちゃおう」

「お、お揃いなのですか?!ゼノン様と?」


 何をそんなに興奮しているのかは分からないが、俺はクルルを連れてギルドへと向かおうとしたのだが


「おいおい。そこにいるのはゼノンじゃねぇか」


 聞き覚えのある声が後ろから聞こえて振り向いた。

 そこにいたのはガバルだった。


 まさかここに来てこんな奴に会ってしまうなんてな。


「どうしてまたこの国にいるんだ?ゼノン」

「別に、何だっていいだろ」


 そう答えてガバルに目をやった。


「ガバルこそなんでここに?」

「何でって決まってんじゃねぇかよ。お前のせいで撤退したデッドアビスに挑むんだよ」


 デッドアビス。

 この国の近くにあって、この世界で最難関と呼ばれているダンジョンだ。


 昨日50層まで進んだがガバル曰く俺のせいで撤退することになった場所だ。


「悪かったな。足引っ張って」


 俺はこいつらを活躍させるためにダメージを出さなかった。

 でもそれは俺が思い込んでいただけなのかもしれない。


 もしそうなら悪い事をした。

 そう思って謝ったが。


「あのさぁ?謝るだけで許すと思ってんのか?この俺様が」

「じゃあどうすればいいんだよ」


 やれることはやった。

 ならどう反応すればいいのか分からない。


「あのさぁ、俺今すっげぇイライラしてんだよね」

「そうなんだ」


 ガバルは俺に目もくれず俺の横にいたクルルに目をやり近付く。


「例えばさ」


 そう言ってクルルの腕を掴む。


「は、離してください」


 クルルが抵抗するが


「この女泣かしてストレス発散とかしてぇのよ。こんな無能の横にいるってことはこの女も相当な無能なんだろうな。あー無能は見てるだけでイラつくぜ」

「やめろガバル」


 出来れば言葉で解決したいと思った俺は静かにそう言った。

 しかし向こうにその気は無いようだ。


「てか奴隷かよ?まったく気持ち悪い奴だな」


 ガバルの視線の先にはクルルの手の甲に刻まれた奴隷の証である紋章があった。


「奴隷は生きてる価値がないからなぁ」


 そう言って剣を抜こうとするガバル。


「がっ!」


 ガン!!!!

 気付いた時には遅かった。


 俺の右拳は柔らかい感触を捉えていた。

 それと同時に振り抜かれていた。


 それが指し示すのは1つ。


「て、てめぇゼノン!」


 後ろに倒れて尻餅をついたガバルが俺に目を向ける。

 やってしまった。


 しかし後悔はない。


「俺やめろって言ったよな?」

「あぁ?!何でSランクの俺がEランクとかいうゴミの言うことを聞かないといけないんだよ?!」


 確かにそうだ。

 EランクとSランク、どっちの言い分を世間は信じるか。

 Sランクに決まっているくらいランクというのは力がある。


 こいつが俺が悪いと言えば俺が悪くなる。

 だから出来るだけ言葉で解決しようとした。


 でも手が出ていた。


「いいぜ。てめぇゼノン。俺がぶっ殺してやるよ。今のは殺されてぇってことなんだろ?!この国にも居られなくしてやるよ」


 大声で叫んでいるせいで周囲の目が俺たちに集まる。


「いいぜいいぜ。決闘と行こうじゃねぇか」


 そう口にするガバルが続ける。


「この後1時間後だ。決闘場に来いよゼノン。そこで俺のパーティとお前のパーティで決闘だ」


 奴がそう言った瞬間


「そうか。チーム戦というわけか」


 新たな声が聞こえる。

 そちらに目をやったら、金色の髪を腰まで伸ばして凛々しい双眸を携えた少女がいた。

 

「【閃光】の異名を持つリリスだと?」


 そう反応を示すガバル。

 リリスと呼ばれた少女は俺に目を向ける。


「こんにちは。先程から見ていたが理不尽な言いがかりだったね。それに見たところ2人パーティのようだ。という訳で私は君達のチームの3人目になりたい。いいだろうか?」

「いいけど」


 そう答えるとリリスは頷いてガバルに目を向けた。


「異論はないな?」

「ねぇよ。1時間後指定した場所にこい」


 そう言ったガバル達は立ち去っていった。

 さて、大変なことになってしまったようだな。


「ぜ、ゼノン様。ごめんなさい私のせいで」


 申し訳なさそうな顔をするクルルに首を横に振る。


「大丈夫だよクルルのせいじゃない」

「ぜ、ゼノン様♡なんてお優しいのでしょうか」


 そんなことを言っているクルルだがほんとに大変なことになってしまったな。

 さて、どうしようか。


 俺とクルルはどちらもEランクでリリスは不明。

 しかし対するガバル達は全員がSランクでレベル99だ。


 一見というよりどう見ても勝ち目のない勝負だ。

 しかし勝たなければならない。



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