表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

序章 : はじめてのしっぱい

初めての連載投稿です。

拙い部分も多々あるとは思いますが、温かい目で読んでいただけると幸いです。

その仕事は、今まで依頼された中でも指折りの簡単なものだった。

ほとんど警備のない、しかも人里から離れた場所にある邸への侵入は、慎重に慎重を重ねた下準備が、バカらしく思えた。

”対象”がいると思われる部屋への道のりも、使用人に目撃される心配すらなかった。

この依頼は果たして、その道ではそれなりに名の知れた自分に回ってくるような類のものだったのか?という疑問が湧いてくるほどに、あっさりと進む計画。

完璧、と言ってしまうには少しばかり足りないが、それに近い手ごたえがあった。

しかし油断は禁物。

そういつものように自分を戒め、衣擦れの音すらさせずに部屋に忍び込む。

気配は殺したまま、素早く侵入口である窓を閉めて振り返った彼は、思いがけない事態に身を強張らせた。


「申し訳ないんだけど。」


その静かな声を発した人物は、自分がいる窓よりもかなり離れたところにある寝台の上で上体を起こし、膝に置いた分厚い本から視線を上げることすらせずに言った。

同業者ですら、その気になれば気配を気取られると事なく背後を取ることさえ可能なのに。

枕元にある燭台の灯りだけが灯る、薄暗い広い部屋の端と端というほどの距離で、素人に感づかれるなど彼の経験上一度たりともなかった。

それどころか。


「もう少しで読み終わるの。だからそれまでおとなしく待ってて。」


頁をめくる微かな音と共に、淡々と告げられた一言に、彼は得物を持つ手から力を抜いた。

こんな形での暗殺者人生初の失敗という事実に、思い切り打ちのめされながら。





ご意見・ご感想がありましたら一言いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ