表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/40

その後4

 父がイラついているという話が城で広まっていた。ヴァレンティーノ殿下のせいであるという事らしい。


「ふふ、お兄様ったら。ウルヴァリーニ侯爵から1本取るんだって必死になっているんですって。エルダのせいでしょ」

ミケーレ様と婚約してから、すっかり大人っぽくなったヴィヴィアーナ殿下。嬉しい反面、寂しいと思っているのは内緒だ。


「申し訳ありません」

「ふふ、全然。楽しくて仕方ないわ。早くエルダをお義姉様って呼びたいもの」

やっぱり可愛い。


 学園に到着し、馬車を降りるために手を貸していると、ミケーレ様がやって来た。こちらもすっかり少年から青年に成長した。既に私の身長を越えている。肩幅もしっかりしてきたし、イケメン度が上がっている。


「ヴィヴィ、エルダ、おはよう」

「ミケーレ、おはよう」

「おはようございます、ミケーレ様」


「エルダ。来週の休みに、騎士団の訓練に参加する事になったんだ」

「ええ、聞き及んでおります」

「エルダも参加するの?」

「ええ、途中からにはなりますが」

「じゃあ、手合わせをお願いしてもいい?」

「はい、喜んで」

「やった」


二人で仲良く園内に入って行くのを見送る。その間、何人かの生徒たちが私に挨拶をしてくれた。



 城に戻ると、柱の影から私を手招く人物が。

「陛下?」

なんと、国王だった。


「エルダ。なんとかしてくれ。お主の父の黒いオーラが半端ないのだ」

「申し訳ございません」

「エルダが謝る事ではない。我が息子がエルダを婚約者にする為に必死になっているのだ。応援するに決まっておる。だが、うっぷんがこちらにやって来る」


国王と共に執務室へ入ると、シルバーアッシュの瞳を見開いた父がいた。

「エルダ。一体どうした?ヴァレンティーノ殿下に何かされたのか?」

「ふふ、父様。殿下に大分、憑りつかれておりますね」

国王と、宰相様と父にお茶を淹れる。


「あの小僧。随分必死になっている。エルダ、何か焚きつけたか?」

「ふふ、いいえ」

「私の目の前で、ヴァレンティーノを小僧呼ばわり……」

国王がぼやくが、皆サラッと流す。


「私の息子を選べばいいだけですよ」

笑顔でサラッと言う辺り、ベニート様の父上だなと思う。


「でも、父様。なんだか嬉しそうですが?」

「え?」

「嘘?」

二人のオジサンが驚いた顔になる。


「まあな。着実に追い込まれているからな」

「そうなの?」

思わず素になってしまった。


「ああ、多分そう遠くない未来、私から1本取るだろう。1本だけだがな」

ああ、そういう事か。

「ありがとう、父様」

お礼を言えば、父が私を手招きする。


カチャリとカップを置いた父は、ふわりと私を抱きしめた。

「誰にもやりたくはないのだがな」

「ふふ、父様の娘である事は変わらないから」

「当然だ」

顔を見合わせ微笑み合う。


「もう大丈夫だ」

そう言った父は、私の頬にキスをした。


それから、父の機嫌が悪いという話は聞かなくなった。



そして。

「エルダ!!」

騎士棟で書類を書いていると、執務室にヴァレンティーノ殿下が飛び込んできた。

「殿下?」


私を見た殿下は、皆のいる前で私に跪いた。

「エルダ。侯爵から1本取った。これで約束は守った。愛している、結婚してくれ」

「ふっ。おめでとう、ヴァル。いや、旦那様か?」


途端にまたもや横抱きにされた。

「すまない、エルダを少しばかり借りていく」

そう言った殿下は、風のようなスピードで自室に入った。


扉を閉めた途端、キスの雨が降って来る。

「やっと、やっとだ。エルダ。愛している」

「んっ」

キスに翻弄されて、言葉が継げなくなる。


性急に進もうとする殿下を、再び聖剣が止めた。

「熱っ!どうして?」

ゼイゼイしてしまう私に、殿下が不満そうにした。


「待て。性急すぎるんだ、バカ」

「すまない、つい」

シュンとしてしまった殿下を、私から優しく抱きしめた。

「初めてなんだ。ゆっくり頼む」


「エルダ……」

優しく、壊れ物を扱うようにしてくれる殿下に、私はキスを返す。

「やっと私のものだ、エルダ」


 それからも、邪魔は入るのだがそれはまたいずれ。今は、この幸せを堪能する事にする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
強く逞しく美しいヒロイン、好きです。
[良い点] 設定はおもしろかったです。 [気になる点] モブといいながら、美しすぎる家族?エルダを好きになった理由は綺麗だから?家族以外の好きになる過程がわからなかった。
[良い点] 甘すぎず、くどすぎず、適度に手綱も絞られ、大変楽しめました! 皆さんお幸せに!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ