↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】幼馴染の『死ぬ死ぬ』が五年続いたので、婚約破棄させていただきます  作者: 木風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/6

第六話 最後の一枚をわたくしに譲ってくださいませ

 数日後、マルグリットは再び王城のサロンへ招かれた。

 最初にアーヴァインと食事をした、庭園に面した部屋だった。

 テーブルには、前回と同じようにローストビーフが並べられている。


「今日は何のお詫びですの?」


 冗談めかして尋ねると、アーヴァインは首を振った。


「今日は詫びではない」

「では、ローストビーフを食べるため?」

「半分は正解だ」


 テーブルの向こうではなく、マルグリットの隣へ立つと、その手には、小さな箱がある。


「残り半分は、求婚だ」


 目を見開くマルグリットの前で、箱が開かれる。

 中には、深い青色の宝石を嵌めた指輪が収められていた。


「マルグリット。私は君といると、王太子である前に一人の人間でいられる。君は私の顔色を窺わず、嫌なものは嫌だと言い、食べたいものには迷わず手を伸ばす」

「食い意地が張っているように聞こえますわ」

「そこも好ましいと思っている」


 アーヴァインは真っ直ぐにマルグリットを見つめた。


「この先、嬉しいことも面倒なこともあるだろう。できるなら、君と一緒に味わいたい。私の婚約者になってくれないだろうか」


 指輪と目の前の人の顔を交互に見た。

 出会ってから、まだそれほど長い時間が経ったわけではない。

 けれど手紙を待つ時間も、食事をしながら笑う時間も、隣を歩く時間も、すでにかけがえのないものになっていた。


「喜んでお受けいたしますわ」


 アーヴァインの顔に、安堵したような笑みが広がる。

 彼がマルグリットの指へ指輪を通した。


「ありがとう」

「ただし、一つだけ条件がございます」

「何だろう」

「これからは、最後の一枚をわたくしに譲ってくださいませ」


 二人の視線がテーブルの上に向く。

 大皿には、ちょうど一枚だけローストビーフが残っている。


「それとこれとは話が別だな」

「婚約をお受けした直後ですのに?」

「だからこそ、対等でいたい」


 二人は同時にトングへ手を伸ばした。

 目が合い、どちらからともなく笑い出した。




 それから半年後。

 王城の大広間では、王太子アーヴァインと侯爵令嬢マルグリットの婚約披露パーティーが盛大に開かれていた。

 二人の希望で、メイン料理には豪勢なローストビーフの塊焼きが用意された。

 招待客たちは、王太子夫妻となる二人はよほどローストビーフが好きなのだろうと囁き合ったという。


 一方、ユリアンとターニャの企みは、両家の知るところとなった。

 ユリアンは公爵家の後継者としての自覚を問われ、領地で一から学び直すよう命じられた。

 ターニャも、仮病によって家の信用を損ねた責任を取らされ、しばらく社交界へ出ることを禁じられた。

 もっとも、マルグリットにとっては、もはやどうでもいいことだった。


「マルグリット」


 アーヴァインが皿を手に戻ってくる。

 その上には、綺麗に切り分けられたローストビーフが載っていた。


「最後の一枚だった」

「まあ。今回は譲ってくださるのですか?」

「婚約披露の日くらいは」

「結婚後は?」

「また話し合おう」

「交渉の余地があるのですね」


 マルグリットはアーヴァインから皿を受け取り、半分に切った。

 片方を自分の皿へ、もう片方を彼の皿へ載せる。


「半分ずつが妥当ですわ」

「私もそう思う」


 二人は顔を見合わせて笑った。

 五年間も続いた、終わりの見えない我慢の日々。

 その先にこんな幸福が待っているとは、教会の最前列で笑顔を張りつけていた頃のマルグリットには、想像もつかなかった。


 人生、何が起こるかわからない。

 特にビュッフェの最後の一枚には、思いがけない運命が潜んでいるのかもしれない。

最後までお付き合いありがとうございました。

「死ぬ死ぬ詐欺」からのざまぁなお話でした。

ローストビーフ食べたくなったら、ブックマーク、★★★★★、よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『無華の花嫁』書影公開
無華の花嫁
~華の加護なき無能な少女は、黒薔薇の殿下に愛される~
和風シンデレラ/異能恋愛/黒薔薇の殿下/虐げられ令嬢/救済&溺愛
本作品の文章・タイトル・設定等の無断転載、無断複製、生成AIへの入力および学習利用を禁じます。
― 新着の感想 ―
面白かったです 死ぬ死ぬ詐欺の題名より、半分こが妥当のが(それもどうなんだ?)・・・王子が夜会で食事をしてるのも良いね(自由だと平和に感じる)
結婚のふりとか、そもそも親たちは認めてたのかとか。 しかし、五年もそんな状態で継続してたんなら、何かしらの政略結婚だったのではなんて思ったりもするのに。 それを、令嬢の一存で解消とか、王太子も自分の好…
面白かった。 この文量なら6話に分けず、短編扱いで一気読みしたかったな。 あと、最後まで教会に触れないのが気になった。 裏事情協会と神父は知らなくて、「教会と神父の前で偽りの誓い立てた罪」で教会がヴ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。