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カゾクアイ  作者: 紀章櫻子
第一章
3/59

3話 結の母親


「えっとねぇ、ここをまがってまっすぐにいったらゆいのおうち!」

「よぉし、待ち伏せして、お母さんびっくりさせよう!」

「うん!」


 私は結の手を握りなおす。


 もうすぐ結とお別れだ。

 やっぱりちょっと寂しいなぁ……。


 結の言う通り角を曲がってまっすぐ進むと、『島田』と書かれた表札がある小さな一軒家が見えた。


 いないとわかっていても、一応インターホンを押す。


 ピンポーン


 のんきな音が響いた。


『はーい』

 

 インターホンから女の人の声がする。


 え? と思ったのも束の間、玄関ドアが開き、なぜかお風呂上りらしい女の人が出てきた。


「あ、おかあさん!」

「……え? 結?」


 結の声にハッとして、私は慌てて目を見開いている女の人に声をかける。


「すみません、結ちゃんのお母さんですよね。結ちゃん、デパートで迷子に――」

「なんで帰ってきたのよ」


 小さく聞こえた舌打ちに、自分の耳を疑った。

 言いかけていた言葉を止め、結のお母さんを見る。


「あーあ、最悪。せっかくうまくいったと思ったのに。ってか、今日家に彼氏呼んじゃったんだけど。どうしてくれんのよ」

「ご、ごめんなさい」


 にらまれて、結が小さく謝る。

 その小さな肩が震えていた。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 私はとっさに、結をかばうように足を踏み出した。


「うまくいったって……結をわざと置き去りにしたってことですか!?」

「はぁ? だったら何? っていうかアンタ誰よ」


 何か冷たいものをかけられたような気がした。

 言葉が、声が出ない。


「ねえ、おかあさん」


 ふいに、結がそっと母親を見上げ、言った。


「おかあさんは、ゆいのこと、いらないの?」


 その瞳は、まるで返ってくる答えを知っているかのようにうるんでいる。


「ええ、いらないわ」


 即答でさらりと当たり前のように言われた返事。

 私の中で何かがはじけた。


「そっ……かぁ……」


 結は瞳から大粒の涙をこぼし、うつむく。


「そうよ、アンタなんか、勝手にいなくなればい――」

「ちょっと!!」


 私は大声でその言葉をさえぎった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

感想や誤字、脱字等あれば是非教えてください。

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