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カゾクアイ  作者: 紀章櫻子
第一章
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2話 結


「やったぁ! ゆいの勝ち!」

「ありゃぁ、また負けちゃった……」


 そろった2枚のトランプを捨てて結がバンザイをし、私は苦笑いで手元に残ったジョーカーを放った。


「ゆい、忍に勝ったよ!」

「あら、すごいわねぇ」

「こら結、そんなこと人に教えないの!」

「しのぶ、トランプよわーい」

「なっ!? そんなこと言う子はこうしてやる!」


 わざわざカウンターの女の人に勝敗を教えにいく結を捕まえ、こちょこちょと脇をくすぐる。


 キャッキャッと身をよじって笑う結をくすぐり続けながら、私は女の人に聞いた。


「すみません、結のお母さんはまだ来られないんですか?」


 すると、ニコニコと結を見ていた女の人も少し困った顔をしてうなずく。


「はい……。何度も放送はしているんですが……」

「そうですか……」


 結の母親をここで待ち始めて、もうすぐ2時間が経とうとしている。


 この2時間の間で、私は結とずいぶん仲良くなった。

 結は私を『しのぶ』と呼ぶようになったし、私も『結』と呼び捨てで呼ぶようになった。

 そして、結のことを色々知った。


 島田結(しまだゆい)、5歳。

 近くの一軒家に母と2人で住んでいるらしい。

 好きなことは公園で遊ぶことで、特にブランコとすべり台がお気に入り。

 将来の夢はケーキ屋さんなんだとか。

 他にもピーマンが苦手だとか、絵を上手に描けるようになりたいとか、色々だ。


 でも、こんなに知っちゃったら、離れがたくなるよなぁ……。


 苦笑しながらため息をついていると、ふいに結が私の袖を引っ張った。


「ねえしのぶー、おかあさんまだー?」

「え? あー……たしかにお母さん、遅いね」


 ごまかすように笑ってみせると、結はほっぺたをふくらませる。


「すぐくるってゆったのに! いいもん、ゆい、1人でかえれるもん! おかあさんなんて、おいてっちゃうから!」


 言うなりダーッとかけだした。


「わ、ちょっ結!? すみません、お世話になりました!」


 迷子センターの人達に早口でお礼を言い、私は結を追いかけた。


 

「結、捕まえた!」


 デパートを出たところでようやく結に追いつき、抱き上げる。


 ……あれ?


 ふと、違和感を感じた私は結を見上げ、ぎょっとした。


「え、ちょっと結?いったいどうし――」

「おか、おかあさ、こなかったぁ……」


 ポロポロと涙が落ちてくる。


 ……そうだよね。いつまでもお母さんが来てくれなかったら、心細いし、悲しいよね。


 私は1度結を下ろし、ギュッと抱きしめた。


「大丈夫。私がそばにいるから」

「しのぶ……?」

「結がお母さんに会えるまで、私が一緒にいるから安心していいよ。家までの帰り道わかる? 家の外で一緒にお母さん待ってようよ。絶対に帰ってくるから」

「……ゆい、かえりみち、わかる」

「おっ、えらいじゃん!」


 体を離し、ニッと笑うと、結もだんだんと表情を明るくさせる。


「ゆい、えらい?」

「えらいえらい! それじゃ、いったん迷子センターに戻って、念のため言伝を頼んでおこうか。あと、お世話になったから、ちゃんとお礼も言いに行こう」


 私がそう言うと、結は何だかよくわかってない顔をしながらも、「うん!!」と元気よくうなずいた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

感想や誤字、脱字等があれば是非教えてください。

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